渋谷という街からローカルとグローバルを結ぶBunkamura

世界から見たら東京はローカル、ローカルメディアこそインバウンド戦略の要

田中:渋谷は外国人観光客の方からも人気が高いです。Bunkamuraは、インバウンド戦略にどのように取り組まれていますか。

西村:残念ながらBunkamuraは、インバウンドに関してこれからの部分が多いですね。

吉良:演劇も字幕は出ていないですよね、非常にもったいないと感じていました。

西村:字幕は出していませんが、演目によってはiPadを使って外国人のお客様に解説をする実験を始めています。ただ2020年をメドに、日本から世界に発信していかなければならないことを考慮すると、いままでの「海外のものを日本のお客様に見せる」発想を改めて、インバウンド戦略に関しては一気に巻き返しをしなければいけませんね。

吉良:万能に見えるWebやモバイルは、世界(=グローバル)に向けては強いけれど地域(=ローカル)にはすごく弱いんです。世界という規模からみると、東京=ローカルですから、東京をローカルと捉えてビジネスを展開していく必要があります。その時に一番効果を発揮するのがOOHメディアなんです。
鉄道というインフラで人の導線を確保し、ライブエンターテイメントというその日その場所の価値に落とし込む。Bunkamuraは東急線と渋谷のOOHという、最強のローカルメディアを持っています。世界中の人たちが渋谷駅を経由してBunkamuraを目指してやってくるチャンスが大いにあります。

西村:「待ってないで迎えにいこう!」と言う、吉良さんの発想そのものですね。駅から渋谷の街へ人を動かすためのイベントを、街の方々と合同で実施する案もあります。たとえば渋谷に行くと、いつも街中に音楽があふれているようにするなどですね。それも東急グループだけが実施するのでは、もったいない。渋谷には大小のライブハウスが43軒ぐらいあります。劇場も多い。同業者皆が協力し合えたらすごいことになりますよ。

田中:「渋谷駅までお迎えにあがる」という、広告展開の発想がすばらしいです。

吉良:西村さんが自ら、渋谷駅でお客様をお迎えしているような、根本はそれくらいのおもてなし感覚がこれからは大切なんだと思います。

西村友伸(にしむら・とものぶ)

昭和46年、慶應義塾大学経済学部卒業後、同年、東京急行電鉄株式会社入社。同社交通事業部管理部部長、社長室部長を務めた後、平成15年、株式会社東急エージェンシーへ出向。同社執行役員メディア本部長などを務めた後、平成20年、株式会社東急アド・コミュニケーションズ代表取締役副社長、平成21年、同社代表取締役社長に就任。平成26年、株式会社東急文化村代表取締役社長に就任し、現在に至る。一般社団法人総合研究フォーラム理事、NPO法人明日の神話保全継承機構理事、一般社団法人日本クラシック音楽事業協会理事。

 

吉良俊彦(きら・としひこ)

上智大学法学部卒業後、電通に入社。 クリエーティブ局、営業局を経て、1985年より雑誌局へ。様々なラグジュアリーブランドをはじめ、各社のメディア戦略およびプロジェクト、スポーツ・文化イベントの企画プロデュースを行う。2004年、電通退社。ターゲットメディアソリューション設立。2011年、マンガデザイナーズラボ設立。
マンガデザイン®プロデューサーとして、「マンガデザイン®」による広告企画の総合プロデュースを手がけ、日本の文化であるマンガをコミュニケーションソリューションとしてビジネスに活用している。大阪芸術大学客員教授、日本女子大学講師。

 

田中里沙(たなか・りさ)
事業構想大学院大学 学長 / 宣伝会議 取締役 メディア・情報統括

1989年学習院大学文学部英米文学科卒業後、広告会社に入社。1993年同社が経営を引き継いだ宣伝会議に転籍し、企業宣伝・マーケティング部、メディア業界担当記者、海外情報デスク担当を経て、1995年「宣伝会議」編集長に就任。2012年事業構想大学院大学教授就任とともに、大学出版部部長として月刊「事業構想」を創刊。新規事業、地方創生プロジェクト研究を実践するとともに、ワークショップ、インタビュー、事例を取材収集し、記事を執筆、発信している。新聞雑誌のコラム執筆、情報報道テレビ番組のコメンテーターなどを務める。2016年4月より事業構想大学院大学学長に就任。

 

『広告0円』 吉良俊彦・著

新たなメディアとして台頭してきたウェブ&モバイルに加え、OOH、そしてエンターテインメントとしてのスポーツ&ライブカルチャーもまた強力なメディアだと位置づけ、これまでの4媒体(TV、新聞、雑誌、ラジオ)との親和性やこれからのメディアミックスの方向性を考察。「広告0円」と提唱する真意、広告における新たなメディアの在り方、これからの可能性を探る。広告・コンテンツの今を理解するための最良の書。
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