「誰でも本屋になれるしくみ」が、出版流通を少しずつ変えていく

新しい発想のために大切なのは、ルーチンワークとクリエイティブワークのバランス

白川:お二人にお聞きしたいんですが、新しいコミュニケーションを生み出す、または見つけるために、何をすればよいのでしょうか。

柳下:ここ5年くらい、ラッキーなことに、ルーチンワークとクリエイティブワークに取り組む時間帯をはっきりと分けられるようになったんですね。そのことは、何かを生み出すのにとてもよい状態であると思っています。

永野:その2つには、具体的にどういう違いがあるのでしょうか。

柳下:ルーチンワークって、コツコツやるしかない積み重ねの作業なんですけど、クリエイティブワークっていうのは、一発逆転が可能な取り組みなんです。そのためには何かを思いつきやすくしておかないといけない。だから、時間を確保して、新しい刺激をインプットできるようになっておくことが必要なんです。

永野:時間があると、それができる。

柳下:はい。たとえば同じ業界じゃない人と飲みに行って議論したりだとか。

永野:僕たちも、つい同じ業界内で固まってしまいがちです。

柳下:もちろんその方が楽しいんですけど、その業界の慣習や常識って、ユーザーには関係ない場合が多いので。そうやって外に出てインプットをして、そこからクリエイティブワークとしてアウトプットしていく。そのバランスが大切だと思っています。

永野:ルーチンワークとクリエイティブワークを分ける。インプットとアウトプットのバランスをとる。

柳下:はい、その2つが新しい発想のために大切にしていることです。

白川:ありがとうございます。瀧さんはいかがでしょうか。

瀧:柳下さんのお話ともかぶりますが、いつもの快適なゾーンを抜けださないと新しい発想は見つからないのかなと思います。僕自身「習慣の生き物」なところがあって、気をぬくと同じような生活を送ってしまいます。クリエイティブワークだと思っていることがルーチンになってしまっている。だから、意識的にちょっと冒険をするようにしています。

白川:最後に、今後の応募者へメッセージをお願いします。

瀧:この賞は、自分の殻を破るきっかけになると思います。日々のルーチンワークから脱却して、新しいものを心底考えられるいい機会なので、「及第点でいいや」という心持ちではなく、ベストを目指すことでいい発見があると思いますのでがんばってみてください。

白川:本日はありがとうございました。

左から、読売広告社永野広志さん、ことりつぎ 柳下恭平さん、オリコム 瀧智之さん、読売広告社白川遼さん。

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柳下恭平(写真右)

1976年生まれ。言葉について思考しながら世界を放浪し、帰国後は校閲者となる。2006年に校正・校閲を専門とする会社「鴎来堂」を立ち上げ、よりよい本を作るためにゲラを読み続ける。ご近所の本屋の閉店をきっかけに、2014年末に「かもめブックス」を開店。店主として店にも立つ。2015年には、誰でも本屋が作れるしくみ、「小さな取次、ことりつぎ」をローンチ。出版・流通・小売、本に関して、上流から下流まですべてにかかわる。写真左は「ことりつぎ」のシステム設計をしてくれる友人、坂西裕彰。

 

瀧智之

1991年千葉県館山市生まれ。千葉県立安房高等学校・駒澤大学グローバル・メディア・スタディーズ学部を卒業後、2015年オリコムに入社。デジタルメディアのプランニング・運用業務を主に担当。クリエイティブ制作への意欲が強く、自身でディレクションを行うことも。週末は専らコピーコンテスト応募とスポーツに明け暮れている。

 

白川遼

2011年、読売広告社に入社。営業部門を経て、都市生活研究所に所属。リゾート地や自治体等のタウンブランディング、商業施設、リゾート商品、住宅等の不動産領域でのマーケティング戦略立案、プロモーションプランニングを担当。2016年より「広告業界の若手が選ぶ、コミュニケーション大賞」の審査員として活動中。

 

永野広志
読売広告社 クリエイティブ局
コピーライター/プランナー

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