広告で大切にすべきなのは何?
前回のコラムでは、「アドブロック」のような手段で広告が非表示にされたり、広告が無意識にスルーされたりしてしまう時代に、広告主はどう変わっていくべきかという話について考えてみました。
その選択肢の一つとして、スバルのファンミーティングやケロッグのオールブランアンバサダーのような、既存顧客とのコミュニケーションをご紹介しました。ここでポイントになるのが効果測定の考え方です。
以前にもご紹介しましたが、既存顧客を重視したアンバサダープログラム的なアプローチをとると、新規顧客を重視したマスマーケティング的なアプローチに比べて、KPIの人数が3桁、4桁も足りないということが発生します。
参考:アンバサダープログラムとは何か?検討する際に必ず議論のループが起きてしまう訳
広告であれば100万人の新規顧客候補の認知を獲得することができるのに対して、ファンミーティングのようなイベントですと、スバルのような大規模のものでも2000人で、通常はもっと少ないことも多いでしょう。
100万人と2000人を数字だけ比べれば、当然100万人の方が良いように見えるはず。「CLUB Panasonic(クラブ パナソニック)」のように800万人も会員がいれば、広告に勝てるケースも増えてくるとは思いますが、それでも数千万人に届けることができるテレビCMと単純に数字だけ比較すると、テレビCMの方が良いと感じる人は少なくないはずです。
ただ、ここで重要なのが「質」の視点です。本来であれば15秒間のテレビCMのメッセージに触れるのと、イベントで半日にわたって企業とファンが一緒の時間を過ごす価値は「質」の面からすれば同じではありません。
ただ問題は、この「質」を「量」に転換するのが非常に難しいということです。
参考:これからの広告効果測定は「質」を「量」で表現する技術が重要になる
はたしてスバルのファンが、スバルの社員と一緒にイベントで過ごした経験や、ネスカフェアンバサダーで、アンバサダーとネスレの人たちが一緒にキャンプで過ごした経験は、雑誌広告やテレビCMと比較したときにどれぐらいの価値があると考えられるのでしょうか?
そんな話のヒントになるプレゼンが、先日東京で開催された「ワールドマーケティングサミット2016」で紹介されていましたので、ご紹介しましょう。
このプレゼンをしていたのはキッザニアの創業者であるハビエル・ロペス氏。
ロペス氏がエクスペリエンスピラミッドとして紹介していた資料によると、人間は一般的に読んだものは10%ぐらいしか覚えていられないのに対し、実際に自分で体験したことは90%を覚えていられるのだそうです。
スライドの詳細を細かく日本語で書くとこうなります。
- 文字を読む行為では10% (新聞、雑誌、メール)
- 言葉を聞く行為では20% (ラジオ)
- 視覚で見る行為では30% (テレビCM)
- 聞くと見る両方では50% (ビデオプログラム)
- 話したり書くことで70% (インターネット)
- 体験することにより90% (体験)
【修正履歴】
2016/10/27 タイトルと本文の一部に誤りがあったため、修正いたしました。