ニュースメディアがニュースだけを発信する時代は終わった
—今の時代、人々から支持されるコンテンツとは。
CNNの核となるコンテンツはブレーキング・ニュース(ニュース速報)であり、それは今も昔も変わらない。しかし、その「伝え方」は大きく変わってきている。
一つは、「どのメディアよりも、長く取材を続ける」ということ。例えば、今年欧州で相次いだテロ事件の発生時、多いときには100人以上の取材スタッフを現地に送り、速報はもちろんのこと、続報をどこよりも長く報道し続けた。一つの事件・事象の報道を、最初から最後まで担うことがCNNの責務であり、求められる役割だと考えている。
また、特定の国で起こった事象でも、他国への影響を勘案し、その国の人々が求める情報を同時に発信することにも注力している。例えばアメリカ大統領選は、安全保障、経済、社会、環境とさまざまな分野で他国に与えるインパクトが大きいため、アメリカ以外の国の人々の関心も非常に高い。民主党大会・共和党大会にはそれぞれ500人もの記者を派遣した。
さらに、ブレーキング・ニュースとは別に、オリジナル番組「Premium Content(プレミアム・コンテンツ)」の制作にも力を入れている。エンターテインメント、スポーツ、テクノロジー、トラベル、スタイル……CNNインターナショナルでは現在、こうした幅広いテーマにわたるプレミアム・コンテンツに、1年あたり1000時間以上を充てている。
そのテーマの第一人者にアプローチして話を聞けるネットワーク、ストーリーテリングの技術など、番組制作には、これまでブレーキング・ニュースの制作を通じて培ってきた知見が大いに生きている。世界中から情報を集めて番組を企画・制作できるのも、世界中に制作拠点を持つCNNならではの価値だと思う。
エレーナが統括する番組の一つ「On Japan」が、10月28日から11月2日まで放送中。CNN東京特派員のウィル・リプリーが番組ホストを務め、インタビューを通じて日本の魅力に迫る。主に「交通手段(新幹線や最先端のパーソナルモビリティなど)」「バーチャルリアリティテクノロジー(ゲームやVRの未来)」「スポーツテクノロジー(2020東京大会に向けてどう進化していくのか)」にフォーカスしている。
—プレミアム・コンテンツに力を入れている理由は。
CNNは、可処分所得が高いオーディエンスを多く抱えている。こうした人々は、ビジネスや政治・経済に関わること以外、例えば旅行やスポーツなどの余暇に関する情報を含めて興味関心の幅が広く、情報探索意欲の高い人が多い。そういうオーディエンスには、ブレーキング・ニュースだけではなく、「ビジネスや日常生活から離れた時間の使い方」「ライフスタイルを充実させるための方法」などの情報を提供することが重要だ。
プレミアム・コンテンツでは、CNNのオーディエンスが興味を持ちそうな分野をカバーしており、テレビであれデジタルであれ、CNNのネットワークの中に少しでも長く滞在してもらうきっかけにもなればと考えている。
—最後に、編集者に必要なスキルとは。
CNNインターナショナルにおいては、世界に対する興味を持っていることが絶対条件だと考える。世界に目を向け、自らの興味関心の枠を超えられるかどうか。例えば、「男女平等」を主張するだけではなく、「男女不平等」な状況も含む多様なあり方を、まずは受け入れる必要がある。情報を収集・判断する際にバイアスをかけず、一つの物事を多様な角度からとらえ、考察できる人が求められている。
CNNの編集チームは、常に高いレベルの多様性が担保されている必要があり、編集者を採用するときは「自分にないスキルを持っている」「自分に似ていない」「自分とは異なるバックグラウンドを持っている」などを基準にしている。彼らの多様な専門性を信じること。それが、CNNの質の高いコンテンツを生み出し続ける上で不可欠だと感じている。