清水富美加の人を惹きつける演技の裏にあるロジック

話題のテレビCM制作から映画の脚本や作詞も行う、電通 エグゼクティブクリエーティブディレクター澤本嘉光氏と、NHK連続テレビ小説『まれ』でヒロインの同級生・蔵本一子を熱演し、映画やバラエティなど幅広く活躍。今最も注目を集める女優の一人である清水富美加が対談。「よい広告」をつくる上で必要な要素を語ってもらいました。

清水富美加
ヘアメイク/牧田健史 Photo /杉能信介

制約があるからこそ面白い表現が生まれる

足立:澤本さんは大手のクライアントを多数担当されていますが、大きなクライアントだからこその大変さってありますか?

澤本:特に企業規模による差はありません。ただ、昔の自分は大手クライアントのCM制作には向いていないと思っていました。実際入社して10年ほどは全然担当していませんでしたし、どちらかと言えばメジャーなものでなく、“企画がいいから目立つ”ものをつくりたいと考えていました。なのでタレントさんもメジャー感が出てしまうので、自分で「使いたい!」と思ってつくったこともなかったんですよ。

足立:そうなんですか。

澤本:ですが、クリエイティブディレクターの佐々木宏さんに、「もっと日の当たる場所に出た方がいい。日焼けしろ」って無理やり引っ張り出されまして。そのお陰で日に当たることができました(笑)。

足立:昔から今も変わらず、CMを制作する際は企画の段階から自身で考えられているとのことですが、企画することがお好きなんですか。

澤本:好きなんでしょうね。企画って、昔の自動車みたいにずっと回していないとエンジンが止まってしまうし、次に動きだすまでに時間がかかるので、ずっと考えていないと難しい。

足立:休まずにずっとですか?

澤本:自分は天才ではありませんし、数を考えて経験則を積み重ねて考えていくタイプなんです。結果的にそれが良い作品をつくることにつながると考えています。あとは、企画で人に負けたくないですし、僕を信頼してくれるクライアントの期待に応えたいという想いで続けられているのだと思います。

足立:まるでトップアスリートのようにストイックですね。加えて、映画の脚本や、アーティストへの歌詞提供などCM制作以外でもマルチな才能で活動されていますよね。

澤本:どこか一点について極めると、応用ができるようになると思うんです。

足立:予算等の制約に関してはどのようにお考えですか?

澤本:予算が少ないからどうこう、というのはあまりなくて。制約があった方が、面白いものができる可能性もありますよね。クライアントと同じ方向に目標を持って一緒に向かっていけば、良いものができると思うんです。映像がつくれて、みんなが喜んでくれれば一番嬉しい。女優の仕事もそうじゃないですか。表現ってある種の制限を克服しようとするときにできてきませんか。

清水:意識したことはなかったのですが、振り返るとそうかもしれません!

足立:澤本さんが清水さんをCMに起用されたきっかけは何だったのでしょうか?

澤本:清水さんが朝ドラ「まれ」で演じた一子ちゃんが魅力的だったんです。あとは直観でこの人を起用してみたいな、って思えたんですよね。

足立:一目でいいと思わせてしまうのはすごいですね。

澤本:僕だけではなく、色々なつくり手が共通認識として思っていたと思います。清水さんは、ロジックで物事を話せる聡明な方なのですが、どこか動きにおかしなところがあって(笑)。そこも魅力だと思います。

清水:ありがとうございます(笑)。芸能界に入って9年になるのですが、女優をさせてもらうまでに、モデル、バラエティ、グラビアと色々なジャンルを渡り歩いてきまして。その間に学んだことが思考や演技にも表れているかもしれません。

足立:普段どのようなことに意識して演技されているのですか?

清水:自分の中にないものは出せないので、与えられた役を自分に落とし込んで考えます。追求していくと、役に感情移入するので、その感情をため込んで現場に行きます。照明と音声を気にしている『冷静な自分』と、演技する上で必要な『感情的な自分』をどうコントロールするか、まだまだ勉強中です。

足立:末恐ろしいですね。清水さんは今後どのような役にチャレンジしたいですか?

清水:タイムスリップしたい願望があって、時代劇に出てみたいです。それと、大好きな日本酒のCMにぜひ出演させていただきたいです(笑)。

澤本:「よい広告」をつくるための必要条件は「良いものをつくろう」という気持ち。そしてクリエイティブディレクターも女優も、僕らは人の感情をプラスに持っていく可能性があることを仕事にできる、すごく幸せな仕事をさせてもらっていることを忘れてはいけないと思います。

清水富美加(しみず・ふみか)

1994年東京都生まれ。「レプロガールズオーディション2008」でグッドキャラクター賞を受賞しデビュー。モデルとして活動をスタートし、現在は、舞台、ドラマ、映画と女優として活躍中。2015年には、NHK連続テレビ小説「まれ」へ、ヒロインの同級生・蔵本一子役として出演。2017年4月公開映画「暗黒女子」主演、同年夏公開映画「東京喰種」のヒロイン出演も決定している。2016年10月クール テレビ朝日金曜ナイトドラマ「家政夫のミタゾノ」ヒロイン出演中。
【現在契約中のCM】広告コスモ石油、ニベア花王

 

澤本嘉光
電通

CMプランナー
エグゼクティブ・クリエーティブ・ディレクター。
1966年、長崎市生まれ。1990年、東京大学文学部国文科卒業、電通に入社。ソフトバンクモバイル「ホワイト家族」、東京ガス「ガス・パッ・ チョ !」、家庭教師のトライ「ハイジ」など次々と話題のテレビCMを制作し、乃木坂46、TMレボリューションなどのPVなども制作している。著書に小説「おとうさんは同級生」、小説「犬と私の 10の約束」(ペンネーム=サイトウアカリ。映画脚本も担当。)映画「ジャッジ!」の原作脚本。東方神起などの作詞も担当している。クリエイター・オブ・ ザ・イヤー、TCC賞 グランプリ、ACCグランプリ、カンヌ国際広告祭銀賞ADFEST(アジア太平洋広告祭)グランプリ、クリオ賞金賞・銀賞、など国内外で受賞多数。

 

足立茂樹
e-Spirit 代表

キャスティング会社 e-Spirit 代表。博報堂出身。
現在は50名のスタッフで年間2000本余りのキャスティングを行う一方、『がんばる人を応援する』を社是にまだ売れていない役者・モデルの売り出しに芸能事務所と協力しながら尽力。

 

足立茂樹(イー・スピリット 代表取締役)
足立茂樹(イー・スピリット 代表取締役)

博報堂を経て2000年にキャスティング会社イー・スピリットを設立。社員40名でタレントからオーディション作品まで年間1000本超のキャスティングを行う。
2015年の個人的な目標:クロールで300m泳ぐこと
http://e-spirit.jp/data/

足立茂樹(イー・スピリット 代表取締役)

博報堂を経て2000年にキャスティング会社イー・スピリットを設立。社員40名でタレントからオーディション作品まで年間1000本超のキャスティングを行う。
2015年の個人的な目標:クロールで300m泳ぐこと
http://e-spirit.jp/data/

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