いま広告には、「Social」が求められている

10月14日、東京・渋谷ヒカリエで第54回宣伝会議賞の審査員によるトークショーが開催され、当日は100人以上が来場。第1部には博報堂の下東史明氏、第2部には電通の磯島拓矢氏が登壇した。
本稿では、磯島氏の講演をレポート。自身が手がけてきた作品を例にとりながら、社会における広告の役割について話した。

広告を通じて新たな価値をつくる

今回の講演テーマは「社会に必要とされる広告を考える」です。それってつまり、「Social」という一言に集約されると思うんです。「Social」はこの4~5年で急速に広告界に浸透してきた言葉で、本当によく使われます。僕は「Social」は非常に大切なテーマであり、キーワードだと思っていて、今日は「Social」という言葉が、広告にとって、コミュニケーションにとって、どういう風に大切なのかということを、僕がこれまでに手掛けた広告を見ながらお話ししたいと思います。

磯島 拓矢 氏

まず、一般的に「Social」と言ったとき、主に2つの意味合いが含まれます。ひとつは「CSR」のような文脈ですね。「うちの会社はこんなCSR活動を行っています」と広告で伝えたり、商品を通じた寄付の仕組みをつくったり……そういったことを「Social」という言葉で表現することがあります。もう一つは、「ソーシャルメディア」ですね。ソーシャルメディアをどう使うかは、広告において、もはや欠かせない視点になっています。

一方、僕自身がコピーライターとして「Social」という言葉と向き合うときには、「企業や商品にいかに社会性を持たせるか」を考えたいと思っています。これは言い換えると、「この企業や商品が、どれだけ社会に必要な存在であるか」ということをしっかり考え、言葉や広告にすることだということです。

企業同士が切磋琢磨しあい、より良い商品・サービスが生み出されていくのが基本的な資本主義経済のあり方。広告をつくる際も差別化が基本となります。それはそれですごく大事だし、もちろん間違ってはいませんが、もう少しだけ俯瞰して、競合他社の商品も包括する今の世の中、今の社会にとって「うちの商品が必要なんです」「うちの会社が必要なんです」というポイントを考え、それを表現するやり方があっても良いのではないかなと思います。

僕がこのように考えるきっかけとなった仕事が、10年前に手がけた日立製作所の企業広告「つくろう。」です。広告の対象となる企業や商品を俯瞰することの大切さを強く感じたのは、旭化成の企業広告「昨日まで世界になかったものを。」をつくったときですね。

旭化成の企業広告「昨日まで世界になかったものを。」、「水の星、ふたたび。」篇

社会との接点づくりは、広告が担う最も重要な役割と言えます。例えば、2011年の九州新幹線開通のテレビCMのコピーは、「祝!九州新幹線」ではなく「祝!九州」。そして、新幹線が停車する各駅に、地元の方々に集まっていただいて、その様子を撮影しました。こうすることで、「九州新幹線が開通して、九州全土がつながる」という社会性をより強く感じてもらうことを狙いました。さらに、リオオリンピックの広告も手がけましたが、制作にあたって「人々がオリンピックに対して感じる価値が下がってきているのではないか?」という社会全体の風潮を意識しました。また、スカパー!の企業広告は、好き嫌いだけで語られがちなコンテンツに、その好き嫌いを超えた社会性という価値を付与する試みでした。

JR九州 「九州新幹線全線開業CM」 特別篇 180秒ver

最後に、明治大学の齋藤孝教授の「広告は社会の『共通知』をつくる役割」という言葉を紹介します。この考え方に沿うと、広告は、社会に役立つ機能を常に内包しています。そんな広告をつくる意義と責任の大きさを改めて見つめてみるのも良いと思います。

 

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