10.ファイヤーワークスブレイクダンサー
いきなりニッチなところから始まりますが、この映像にも、「キャッチー」「ユニバーサル」「0秒スタート」など、様々な要素が詰め込まれています。
<予想: 2000円(花火代) → トータル1000万再生>
※以下、トータル再生数はすべて、各SNSの再生数合算の予測値です。
9.逆再生ウォーク
言わずと知れた逆再生動画。ただ逆に歩き、逆再生するという「シンプル」さ。
誰もがスマホ一台で「真似」できてしまいます。
予想:0円 → トータル1000万再生
8.ワイヤーアート
一瞬で「予想外」な変化を見せる、ありそうでなかった錯視アート。
もちろん、緻密な設計と技術力は求められますが、コスト的には相当抑えられているのではないかと。
<予算:数万円?(ワイヤー代) → トータル2000万再生>
7.RISE —全力イス取りゲーム—
これは個人的に制作を担当させてもらったノジマ相模原RISEの例です。日本で盛り上がりを見せるアメフトチームの存在をより広げるために、どんな方法があるか考えた末に、”子供の遊びをしてもらう”というアイデアが生まれました。
<実費:3000円(イス代) → 3300万再生>
6.グレイシーとスレイジー
モルモット姉妹が1本の草を食べる…ただそれだけの映像が世界中に広がりました。”草”を口火としたの平和な争いと、ほっとする結末、そして巧みなスローモーションが、動物の「かわいさ」を極限に引き出しています。
<予想:10円(草代) → 8000万再生>
5.リアルスパイダーマン
インド人のジャヨーティラージュさん、通称モンキーキング。観光客に大人気のフリークライマーだそうです。もはや誰もが真似できない「超人技」ですが、これどうなってんの?という「物議」を醸し出しそうな展開が、ここまでの広がりを生み出しました。
<予測:0円 → 8000万再生>
4.スパイダードッグ
これは、2014年世界ベストバズムービーの1つですが、”犬”に”巨大蜘蛛”を着させるという「異色」の組み合わせで、「こわい」から「かわいい」への感情ギャップの作り方が秀逸です。これぞまさに、ワンアイデアで世界中に話題を作り出した魔法のような事例だと思います。
<予測:数十万円 → 1億7000万再生>
3.PPAP
厳ついおじさんが、かわいいダンスを踊り出すという「ギャップ」と「キャッチー」さがまず人の目を留め、ペン×アップル×パイナップルという「謎」で「異色」の組み合わせが、これは一体どういうことだ・・・という「物議」を醸し出しだしました。
そこに、ジャスティンビーバーという強烈な「お墨付き」が出現し、話題は加速。
理解はできないが、耳に馴染む「音楽」と、見えないペンが刺さった時の「カタルシス」が、つい癖になって繰り返して聞いてしまう。
その”見えないアイテム”さえ持てば、誰もが「真似」できてしまう仕組みで、「二次創作」が大量発生し、瞬く間に世界中へ拡散…。
強引に分解するのなら、こんな要素が浮かび上がります。しかしこの例には、言語化できない”熟練した何か”がなければ、ここまで人を動かせないように感じます。
<予測:10万円(楽曲制作費 ※本人談) → 1億3000万再生超>
2.TASTY
今や世界最強のファンページの1つでもあるTASTY。
SNS上で閲覧・シェアしたくなる編集に特化したこの、まったく新たなクッキング動画は、世界で述べ数十億再生されています。
中でもトップに輝くのがこのピザ動画。
「おいしそう」ということは言わずもがな、「予想外」な一手間を加えることで、ピザをよりおいしく、「便利」に食べることが可能に。すぐに「真似」できてしまう「短尺」の動画は、常に洗練を続け、レシピのアイデアも目を見張ります。
<予測:数百円(材料費) → 1億5000万再生超(この動画の場合)>
1.アイスバケツチャレンジ
まさにワンアイデアで魔法のような結果を生み出した、21世紀最も話題になった動画とも言えるのが、このアイスバケツチャレンジです。
「社会善」を目的として、氷水をかぶる「キャッチー」な「指名」制のアクションが連鎖。誰もが「真似」しやすい仕組みが、海外セレブを巻き込み「お墨付き」を獲得。その行動に対する賛否両論について「物議」を醸すことで、”人”をかつてない規模でメディア化したケースです。
費用はほぼ0円、その再生数は数億を超えただけでなく、世界最大規模の”アクション”を生み出しました。
以上を総括してみてみると、様々なバズのツボが抽出されると同時に、一つの共通点が垣間見えます。
それは、”その身ひとつで出来る”という事です。
ちょっとした材料さえあれば誰もが出来てしまう例がほとんど。
その身ひとつで出来るからこそ、ローコストで済む。
その身ひとつで出来るからこそ、「真似」しやすく、自分ごと化できる。
その身ひとつで出来る限界に挑めば、「予想外」な結果を生み出す。
世界を動かしたいとき、莫大な予算をかけて、かつてない壮大なチャレンジに挑む、というのも一つの手ですが、その一方で「その身ひとつで出来る」些細なことに金脈は眠っているかもしれません。
PPAPのように、そこには、いまだ解剖されていない、心の琴線を動かす”何か”が存在しますが、その”何か”を突き止められたその時、バズという領域の次の扉が開くことになりそうです。
全12回の本コラムの後半パートでは、そんな”何か”を突き止めるために、僕たちはいかにしてデータを駆使すべきなのか、どんな未来が待っているのか、その可能性を検証していきます。次回「バズの分解(仮)」。