解説動画の効果を引き出す コミュニケーション設計 

simpleshow「解説動画」の活用によって成果をあげている企業は、ターゲットのカスタマージャーニーをどう描き、そのどのプロセスで、どのような目的・KPIをもって解説動画を活用しているのでしょうか。2社の戦略に迫ります。

CASE1:中小企業の経営者とシステム導入担当者双方の商品理解を促す

日本マイクロソフト

ss-c1

マイクロソフトの法人向け営業部門の中で、特に中堅・中小企業を対象としているSMB営業統括本部。

デマンドジェネレーションから購買に至るまでの一連の流れをトータルにマネジメントし、短期的・中長期的な売上目標を達成することをミッションとしている。

見込み客となったターゲットの、パーチェスファネル上のステージを進めていくことはもちろん重要だが、並行して、まずパーチェスファネルに入っていく人を増やすことも不可欠だ。その取り組みのひとつとして、解説動画の導入を決めた。

動画では、マイクロソフトが販売するクラウドサービスについて、「そもそもクラウドとは?」「マイクロソフトのクラウドサービスできることとは?」「導入するメリットは?」といったことをわかりやすい言葉で説明している。

「ターゲットは、決裁権者である中小企業の経営者。ITにそもそも関心がない人も多く、まず関心を持ってもらうのが容易ではありません。現在のビジネスを安定的に成長させていきたいと望む人が多く、ITによる変革で急成長を遂げようという野心を持つベンチャー企業とはニーズが違います。

ソリューションベンダーが売り込みに来ても、専門知識が不足していてよくわからない。メリットが理解できないものは導入したくないという合理的な一面がある一方、周囲の導入状況は大いに参考にするという一面もあり、説得は至難の技です」とSMBマーケティング本部の清水利勝氏。

ss-1

マイクロソフト クラウド簡単早わかり解説動画の1シーン。

決裁権者である経営者自身だけでなく、サービスを選定し実際に導入を主導する担当者(部下)もターゲットペルソナに設定し、導入メリットと中小企業にとっての必要性をわかりやすく説明した。

決裁に至るまでのカスタマージャーニーを、起案者のタイプ別に3通り作成。彼らが上司や経営者に稟議を上げる上での商品理解をサポートできるような動画を目指した。

日本マイクロソフトの中堅中小企業向けビジネスソリューションのWebページには、ITやマイクロソフトに興味を持ってもらうことを目的としたコンテンツ約700点がずらりと並ぶ。その中で、解説動画は3番目に閲覧数が多いそう。各コンテンツからのコンバージョン(無償評価版のトライアル)を毎日トラッキングしており、解説動画はある程度の規模のリーチを確保しながら一定のコンバージョン率を維持しているという。

「初期投資や運用コストが抑えられるという、記事コンテンツや口頭説明では伝わりにくいメリットを、うまく可視化して伝えられたのが効果的だったと思います。動画を制作するだけに留まらず、制作の過程で、自社サービスのどこにターゲットに響くポイントがあるのかをコンサルティングしてもらったことで、他のコミュニケーションにも生かせる視点を得られました」と清水氏は話す。

今後は、解説動画を活用したマーケティング活動をよりスケールさせていくという。そのためには「動画の閲覧者」をより増やすための取り組みが必要と考えており、製品機能の訴求ではなく、ターゲットの情緒に訴えるようなコミュニケーションにも着手する予定だという。

日本マイクロソフト SMB営業統括本部 SMBマーケティング本部 清水利勝氏

MA×コンテンツでワントゥワンのマーケティングを実現

GEヘルスケア・ジャパン

ss-c2

医療機器を主に大規模病院に向けて販売してきたGEヘルスケア・ジャパン(GEHCJ)は、国が進めている「2025年モデル」(病床機能再編)を踏まえ、プライマリ・ケアセグメントを対象としたマーケティング、セールスに力を入れ始めている。

「医療機器導入に対する医療現場の意識もこれまで以上にシビアになっている。従来は各科の現場の購買影響力が大きかったのですが、今は経営者の影響力が大きくなりつつあります。また、中小規模の医療施設では各科に常駐の専門医がいないところも少なくなく、機器導入におけるステークホルダーが複数人に及ぶケースもあることから、各セグメント・ターゲットに合った訴求、ワントゥワンマーケティングが求められています」とGEHCJの石村英樹氏・小山博之氏は話す。

プライマリ・ケアの中心となる診療所・クリニックは10万施設を超える。従来型の対面営業に加え、マーケティングオートメーション(MA)ツールを活用したデジタルマーケティングにも取り組み始めた。

ss-2

Carestation 600シリーズ解説動画の1シーン。

GEHCJはマルケトと連携、医療従事者向けポータルサイトに集約されるデータをもとに、ターゲットの分析とデマンドジェネレーションに取り組んできた。そこでは、各セグメント・ターゲットに合ったコンテンツが不可欠であり、解説動画もその一環で制作した。

高性能で小型の麻酔器「Carestation 600シリーズ」の解説動画は、中小病院における麻酔器の決裁に関わる、経営者、麻酔科医、臨床工学技士、看護師、事務員といった幅広いターゲットに対し、導入メリットをわかりやすく伝えることが目的。中小病院の『手術室内のスペースが限られている』という共通の問題点を提示して共感を得た上で、コンパクトかつ軽量で使いやすいという商品特長を訴求。同商品を選ぶべき理由=「Why?」を明確に説明することに努めた。

学会会場で配布したチラシやダイレクトメールに記載したQRコード、またEメールからランディングページへ誘導し、さらに医療従事者向けポータルサイトに誘引して解説動画を視聴させることで、サイト内の回遊を促した。

そのほか、GEHCJの営業担当や販売代理店の営業担当がiPadで動画を見せながら医師に説明をするといった使い方も。

「学会で配布したQRコード付きチラシからポータルサイトへのアクセス率は7割にのぼり、動画の視聴によってサイト滞在時間は明らかに伸びました。リアル×デジタルのチャネルの連携に可能性を感じましたし、お客さま(医師)のニーズの高さも実感。良質なコンテンツを提供していけば、興味を持ってもらえる手応えを感じました」。

今後は、「どんなユーザーが、どんな興味関心を持って、どんなコンテンツを閲覧しているのか分析し、その行動特性や購買意向度に応じてきめ細やかなアプローチを行っていきたい」と考えている。

GEヘルスケア・ジャパン ライフケア・ソリューション本部 マーケティング部部長 石村英樹氏
GEヘルスケア・ジャパン マーケティング本部 アドバタイジング&プロモーション部部長 小山博之氏
マルケト リードビジネスコンサルタント 安竹由起夫氏

世の中に流通する情報量が爆発的に増え、コモディティ化や商品・サービスの複雑化が進むなかで、自社の商品・サービスの価値を伝え、ターゲットに来店や申込み、購買といったアクションを起こしてもらう上で必要な「理解」を、どう促すか。コモディティ時代の今、企業にとって必要なコミュニケーションの技術・手法を取材しました。

編集協力:株式会社 simpleshow Japan | www.simpleshow.com
この記事の感想を
教えて下さい。
この記事の感想を教えて下さい。

この記事を読んだ方におススメの記事

    タイアップ