くまモンの入浴VS温泉でシンクロ 熊本と大分の「温泉動画」企画対決

「隣の大分には、温泉で負けないぞ」

編集部:自治体のクリエイティブというと動画が話題ですが、両県は早くから取り組まれていますよね。

高屋:大分県では2015年10月に公開した、シンクロナイズドスイミングとコラボレーションした「シンフロ」というPR動画が代表作です。本来はタブーとされている「温泉で泳ぐ」という試みを映像化したもので、「第53回ギャラクシー賞」(放送批評懇談会)のCM部門「選奨」を受賞しました。こだわりは、シンクロ選手でありシドニー五輪メダリストの藤井来夏さんの出演、air:manさんによる振付、清川進也さんによる音楽など、プロのキャストや制作スタッフを起用した点です。

成尾:実際にどのような反響がありましたか。

高屋:キー局13番組で露出があったほか、「Yahoo ! ニュース」のトップにも掲載されました。それに、名刺交換をする際によく「シンフロ」の話題になるんです。嬉しいですね。

成尾:しかし、こうした思い切った企画がよく通りましたよね。

高屋:その質問、非常に多くいただきます(笑)。今思いますと、広報課長を拝命した直後で、広報の素人ながら怖いもの知らずで企画に取り組めたことが大きかったです。以前に制作した動画も面白かったのですが、今回は「温泉で暴れる」という、県民にとって理想のストレス発散法をストレートに表現できたので、これがウケた理由だと思います。温泉は一般的に制約が多い場所ですから、「本当はできないけれど、一度はやってみたいよね」という根源的な欲求を満たせる動画に仕上がったと思います。

成尾:熊本県では「おんせん県大分」という強固な存在をかなり意識した動画にはなっているのですが(笑)、今年3月に「くまモンの休日」という動画を公開しました。県内だけではなく海外の観光客にも熊本の温泉に入ってもらいたいと思い、英字の字幕つきで温泉の入り方やマナーをレクチャーする内容になっています。

高屋:私も拝見しましたが、一番のポイントはやはりくまモンの意外な行動ですよね。

成尾:そうですね。今回のサプライズは、「くまモンに本当に温泉に入ってもらった」ということです。くまモンはこれまで「赤いほっぺたを落とす」という事件を起こしたことはあるのですが(笑)、今回は実際に湯船に入ってしまうという驚きの展開です。

この動画は3月12日の「くまモン誕生祭」で初めて公開したのですが、ファンからは悲鳴が上がりました(笑)。思い切った絵づくりは、「隣の大分には、温泉で負けないぞ」という意思表示でもありますね。

高屋:再生回数(約133万回)では「シンフロ」に軍配があがっていることをお伝えしておきます(笑)。大分の動画は想定視聴者として県外の方々、特に海外の皆さんの目を意識しました。誰でも映像を楽しめるように、できるだけ視覚で伝わるように言語に頼らない内容にしたんです。実際に動画視聴者のうち約35%は海外からの視聴だということも分かっています。

次ページ 「「くまモン一点突破」により県全体で一本の筋が通った企画に」へ続く

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