日本独自のプロモーションを実施
世界でもトップクラスの販売数量を誇る「チンザノ」だが、ここ数年は20代、30代の愛飲者が減少していた。「スパークリングワイン市場が活性化する一方で、チンザノユーザーは高齢化。若い層を取り込めておらず、新たなポジションを築けていないという危機感がありました」と、サントリーワインインターナショナル 輸入ブランド部 菅原啓さんは話す。
輸入総販売代理店であるサントリーは、チンザノを製造するイタリアのカンパリ社と連携して、グローバルキャンペーンを展開していた。しかし、長年販売を続けるなかで、その危機感をもとに新たなプロモーションの必要性を実感していた。
同輸入ブランド部課長 三宅智子さんは「従来のグローバルキャンペーンは業務店で使うツールに注力していましたが、それだけでは不十分で今の時代に合っていないと感じていました。さらに、日本とイタリアでは、ブランドが置かれているポジションも異なります。そのため、日本に合ったプロモーションをやらせてほしいと3年ぐらい訴え続けて、ようやく了承を得ました」と、実施までの道のりを振り返る。
インターネットを中心とした3つの柱で展開
今回のプロモーションでは、3つの柱を立てている。
1つめはグルメブロガーを対象に、チンザノ×Webで展開するグルメサービス「Retty」のコラボイベントを開催。オリジナルメニューを提供するなどし、そこから情報を拡散したこと。2つめは首都圏で営業担当者が新たに37店舗の飲食店を開拓し、Rettyで「チンザノが飲めるお店」として紹介したこと。3つめはWeb版「東京カレンダー」で4回に渡って連載した小説「お酒の履歴書」。この小説ではターゲット層を主人公にし、チンザノアスティやそれを実際に飲むことができるお店を絡めたストーリーが展開されている。
「ブランドのファンを拡大させるために新しいお客さまへリーチさせることなどを考え、プランニングしていきました」と、サントリービジネスエキスパート 宣伝部國塩淳さん。「その上で、複数のメディアを組み合わせたかったが、点のコミュニケーションになることは避けたかった。サイバーエージェントさんであれば、立体的にうまくアウトプットしていただけると思い、お願いしました」。
この依頼を受け、クリエイティブディレクター 二宮功太さん、プランナー 竹中剛さん、アートディレクター 末永剛さんを中心とするサイバーエージェントのチームは、2つのポイントを意識して戦略を立てた。
「チンザノというブランドは知っていても、スパークリングワインがあることを知らない人は多いので、その認知を上げること。そして、東京カレンダー=小説、Retty=キュレーション記事と、それぞれのメディア特性を生かして、クリエイティブを最適化してこうと考えました。その上で、チンザノというブランドを立体的に見せていく施策を積み上げていきました」。
「東京カレンダー」の小説では、ターゲット世代のリアルな日常を描きながら、チンザノを飲むシーンを伝え、その世代の共感を集めた。「Retty」と組んだイベントでは店の協力のもと、チンザノに合うオリジナルメニューを開発。店頭には海外から取り寄せたチンザノの古いポスターを掲出し、フォトプロップスとしても使える吹き出し型のフライヤーを制作するなど、来場者が楽しめる空間づくりにも注力した。