就任して2週間、米・Marketoの新CEOに聞く、日本市場の戦略

米国に拠点を置くマーケティング専業ベンダーのMarketo(以下、マルケト)は10月末、スティーブ・ルーカス氏を新CEOに任命した旨、発表。11月1日をもって創業者であるフィル・フェルナンデス氏に代わり、スティーブ・ルーカス氏がCEOに就任した。CEOに就任して2週間のスティーブ・ルーカス氏が最初に訪問したのが、日本市場。同社が日本市場を重視していることの表れとも言える。来日中のスティーブ・ルーカス氏に今後の日本市場での戦略と意気込みを聞いた。

THE MARKETING NATION SUMMIT 2016 の様子

—日本の市場をどう見ているか。

私がCEOに就任して2週間で日本を訪問していることからも、日本の市場を重視していることが分かると思う。マルケトの中で最も高い成長率を誇るのが日本の市場であり、これからも成長に向けた日本への投資は継続して行っていく考えだ。

日本で営業を開始して約2年で導入社数は300社を超えたが、日本の経済規模を考えれば、その社数はごく一部。新規顧客を開拓し続けても10年は成長し続けられるのではないだろうか。新規開拓に際しては、特に中小規模の企業の獲得に成長機会を感じている。

またB2B事業者向けにはなるが、ABM(アカウントベースドマーケティング)のアプローチに即した機能提供を開始している。こうした新規の機能提供は既存のお客さまに対して、マルケトの活用可能性や使用シーンを広げることにつながる。新規を開拓しながら、既存のお客さまに際しても新たな提案をし、日本でのビジネスを成長させていきたい。今から1、2年のうちに、日本のチームは2倍規模に拡大させることも考えている。

—CEOに就任する前、マルケトをどのように評価していたか。

毎年開催され、今年も米・ラスベガスに約6000人が集まった「THE MARKETING NATION SUMMIT」を始めとする、マーケター同士が知見を交換し、コラボレーションが生まれるコミュニティには以前から関心を持っていた。マルケトを取り巻くコミュニティが活性化する背景にあるのは、マーケターとマルケトの絆の深さ。CEOに就任する前、20社のお客さまと話をしたが、改めてマルケトという会社がマーケターの方たちから強い共感を得ていることを理解した。技術面だけでなく、このコミュニティこそがマルケトの他社にはない差別化要素だと考えている。

「MARKETING NATION」はマルケトユーザーに限定せず、広くマーケターの方たちに参加をいただいている。コミュニティから得られた知見をもとに他社のソリューションを活用している方もいるが、マルケトのソリューションには高い独自性があるので、マーケターが未来に向けて進化を遂げる上で、外すことができないパートナーであると理解してもらえるはずだと考えている。

フェルナンデス氏が築いてきた、マーケターのコミュニティである「MARKETING NATION」、またパートナーエコシステムは継続していくし、2年で今の10倍程度の規模に成長させようと考えているくらい、これからも注力していく。

—マルケトの独自性をどう評価しているか。

マルケトの強みは、一つのプラットフォームであらゆる目的を実現できることだ。あらゆる業種のマーケターにとって、お客さまと生涯にわたる関係を構築することは究極の目的と言えるだろう。その点、マルケトは獲得からアドボカシーに至るまで、ライフサイクルのあらゆるステージにいるお客さまとの関係構築を一つのプラットフォーム上で実現できる。

近年、デジタル上のタッチポイントが拡充し、そこで生まれるインタラクションが爆発的に拡大する中で、マーケティングの実行・マネジメントはますます複雑化している。マルケトは社内におけるマーケティング業務の管理・オペレーションも、社外のお客さまとエンゲージメントを深めるための実行も、一つのプラットフォームで支援することが可能な点も大きな強みと考えている。

いまマーケティングソリューションの市場は専門特化した小規模な企業が複数存在している状況だ。しかしマーケティングのデジタルトランスフォーメーションを支援できるソリューションを提供できるのは、マルケトだけだと確信している。

デジタル上でのお客さまとのタッチポイントが拡大する中では発生する大量のデータを瞬時に処理できる「大規模な拡張性」があること。大量のデータを基に、一人ひとりの顧客を理解する、“デジタルペルソナ”をつくる支援をするための「インテリジェントなプラットフォーム」であること。マスではなく、個々のお客さまに合わせたコミュニケーションをするための「パーソナル」の3点が求められるテクノロジー、機能であり、マルケトはそれを提供できているからだ。

—CEOとしての今後の展望とは。

企業とお客さまのエンゲージメントを深めるプラットフォームとしてのマルケトの価値を高め、広めるための活動をしていきたい。

セールスフォース・ドットコムと聞けば、多くの人が「セールス」を想起するはずだ。私はマルケトを「マルケトと聞いたら、マーケティング」と想起されるくらいのポジションをつくっていければ、と考えている。

Marketo CEO
Steve Lucas(スティーブ・ルーカス)氏

マルケト入社前はSAPに在籍。7年のSAP在籍期間中、データベース&ミドルウェア事業部門担当グローバルエグゼクティブバイスプレジデント兼ジェネラルマネージャー、ビジネスアナリティクス部門担当グローバルジェネラルマネージャーを歴任。それ以前はSalesforce.comでプラットフォームマーケティング担当シニアバイスプレジデントを務め、同社のクラウドベースのエンタープライズアプリケーション開発の展開を統括。さらに、BusinessObjectsでの上級幹部職や、TechAmericaのBig Data Committeeを含むさまざまな政府機関による技術リーダーシップイニシアティブの共同議長を務めた経験も有する。現在、TiVoおよびSendGridの取締役。コロラド大学で経営学士号を取得。

 


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