引きこもっていた高校2年生の頃は、想像力を持て余して苦しかった(ゲスト:宮本亜門さん)【後編】

CM演出の経験がある亜門さん。今後もやる可能性あり?

中村:10月28日からはシンガポールで亜門さん演出の能と3D映像による『幽玄』がはじまります。能の表現はハイコンテキストなので、シンガポールで能を3Dで料理して見せるのはハードルが非常に高いと思いますが、その点はいかがですか?

宮本:そう、おっしゃる通りですね。僕は能楽堂にたまに行くんですけど、年齢層がどんどん高くなっていて、若い人が何人かはいるけど少ないですし。日本の能などは古いと片づけられかねない危機感があります。最初は新しくて、全く違う血をぶつけることでお互いに恐怖心だったり、色々なことがあると思います。

でも、世阿弥は最初、そういう目に見えないものを感じたから、能をつくったのかもしれません。それをテクノロジーでやれば、却って面白いんじゃないかと思っています。僕はそういう色々な方法論を違うところでぶつかり合わせるべきだと思っていて、よく伝統芸能というけど、もともと彼らは伝統をしたくてつくったわけじゃないんですよね。

中村:なるほど。

宮本:みんな先鋭的だったり、先駆的だったり。そのつくった最初の感覚をどう取り戻すのか。モーツァルトだって、今の時代に生きていたら絶対にゲーム音楽をつくってると思うんですよ。当時は最も変わり者とされた先駆的な人たちが、結果的に後世に作品を残しているということですから。

澤本:そうですよね。

宮本:だから、最初にその人達と出会っているかのように自分の頭を柔らかくして考えるようにしています。モーツァルトのオペラを演出する時も、何百年も語り継がれてきたモーツァルトの本はなるべく無視する(笑)。こんなことを言うと、また音楽ファンに「クラシックだぞ」と怒られるんだけど。でも、最初にクラシック音楽なんていうタイトルで彼がつくったはずがないと。

中村:そうですね。

澤本:宮本さんはCMの演出もやられたことありますよね。

宮本:1回あります。SMAPのNTTのCMですね。僕が映画を撮った後にすぐ撮ってくれないかと頼まれて。舞台とは違う面白さがありましたね。

澤本:もし、またCMの演出という話がきたらどうします?

宮本:モノによってはぜひ。でも、この先輩方の前では言いづらいな(笑)。

澤本:何をおっしゃるんですか(笑)。聞いてらっしゃる方、モノによっては宮本さんがCMの演出をやってくれるかもしれません。

権八:この番組は広告業界のリスナーが多いからね。

中村:残念ながら、お別れの時間になってしまいました。濃密な時間をありがとうございました。今夜のゲストは演出家の宮本亜門さんでした。ありがとうございました!

<END>

構成・文:廣田喜昭

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