米Twitter社は11月、Twitterを活用して展開された秀逸な広告・キャンペーンを表彰するアワード「Twitter Awards」の結果を発表した。
「The #Customer Award」「The #Creative Award」「The #Live Award」「The #Impact Award」「The #Scale Award」の計5部門あり、各部門にゴールド1点・シルバー1点・ブロンズ1点が贈られた。
各部門のゴールド受賞キャンペーンは以下の通り。
<The #Customer award>
Apple Support「AppleSupport Launch」
Twitterは発信できるツールであると同時に、顧客と双方向のコミュニケーションが取れる場でもある。ゴールドを受賞したのはTwitterを使って顧客からリアルタイムに問い合わせ対応したケースだ。
オンラインカスタマーサービスの平均応答時間は長く、ひどい場合は17時間にものぼると言われている。そこでAppleは、「@AppleSupport」のアカウントを用い、Twitterを使って顧客からの問い合わせやコメントに対応している。2016年3月のスタート以来、15万件以上の「いいね」や「リツイート」を獲得した。SNSは顧客がポジティブな発信も拡散するが、ネガティブな発信もまた投稿しやすく、ネットでの炎上につながるケースもある。困っている顧客に即座に対応することは顧客満足を高めるだけでなく、リスク回避にもつながると言えそうだ。
<The #Creativity award>
Airbnb「#LiveIntheMovies」
2月29日の第88回アカデミー賞の発表に合わせて、宿泊予約サイト「Airbnb」はアカデミー賞の聴衆にアプローチする、ユニークなキャンペーンを行った。
その内容は「アカデミー賞にノミネートされた映画の中で、どの世界に最も住んでみたいか」をTwitterユーザーに尋ね、回答に合わせてオススメの宿泊場所を返信するという企画。例えば、『ジュラシックパーク』の舞台に住みたい人には、コスタリカの小さい島を提案するという具合だ。
「Airbnb」はキャンペーンを通じて、ソーシャル上で、メディアの予測をはるかに上回る量・質の会話を生み出し、アカデミー賞を中継するテレビ番組の広告枠にCMを出稿した企業のそれを上回る結果となった。世の中が注目する大型イベントと連動したSNS活用は、クリエイティブ次第で大きな成果を上げる好例と言えそうだ。
<The #Live award>
NASCAR「Ready. Set. Race」
NASCAR(全米改造自動車競技連盟)は、毎年開催しているデイトナレースで会場内にTwitterのロゴやハッシュタグ「#DAYTONA」を露出・掲出し、レース中にハッシュタグでのツイートを促した。この試みでライブ感、レース観戦者同士の一体感を演出することに成功している。デジタルが浸透した時代だからこそ、ライブイベントの存在感が高まっている昨今。特にライブイベントとTwitterは相性が良く、参加者のエンゲージメント構築が見込まれる。
NASCARはこの取り組みにより1分で、1万3000件を超える歴史上、最大のツイート記録を更新している。さらにTwitterアカウントのフォロワーは640%の増加を記録したほか、レース当日は約3倍のエンゲージメント率増加が計測されている。同じ瞬間を共有することは、心のつながりを生むようだ。
<The #Impact award>
SNICKERS® Australia「@Hungerithm Launch」
「お腹が空いたら…」のキャッチフレーズで有名な、チョコレート菓子の「SNICKERS」。オーストラリアでは、そのブランドコンセプトを生かした店頭販促連動型のTwitterを活用したキャンペーンが行われた。
その内容とは、Twitter上のツイートなどから、ソーシャル上の人々の「怒り度」をリアルタイムで測定。その度合いが増すと「SNICKERS」の販売価格を割引するというもの。ユーザーは、同国内のコンビニエンスストアチェーンで、怒り度合いに合わせて発行される割引クーポンを携帯電話に表示させ、店頭で提示すると、割引の特典を受けられた。ユニークな仕掛けは、ネット上でバズを生み出したほか、期間中に当該のコンビニエンスストアチェーンで15万個以上の「SNICKERS」の販売につながった。SNSの話題が行動まで喚起した成功ケースと言えそうだ。
<The #Scale award>
Dove「Dear Media」
ユニリーバの「Dove」は女性たちが、自分たちの言葉で女性の美しさを再定義しようというメッセージをグローバルで発信し、社会的に大きなインパクトを与えてブランドと消費者のエンゲージメントを築いてきたブランドだ。
次なるチャレンジとして「Dove」は、女性アスリートが競技中、ルックスなどの表面的な部分を評価する発言が多いことに対して、意義を訴えるキャンペーンをTwitterを活用して実施した。大型のスポーツイベントの開催前、そして開催中と女性アスリートのルックスに言及した報道を見かけた際には、ハッシュタグ「#MyBeautyMySay」を使ってその記事をツイートすることを促したところ、多くの消費者が「Dove」の呼びかけに共鳴。共感の輪が広がり、3億2100万人以上のユーザーへのリーチを獲得した。
なお日本からは、サイバーエージェントの@AbemaTVが、「The #Scale Award」でシルバーを受賞した。今年4月に発生した熊本地震を受け、「#熊本県の地震情報を配信しています」というハッシュタグを軸に行なった情報発信が評価されたもの。
SNS上の情報拡散のメカニズムを理解し、それ踏まえたキャンペーン設計を行うことは、現代のプロモーション戦略を考える上で欠かすことのできない視点。
今回のアワードの結果からは、そのヒントを学ぶことができる。
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