ブランディングを「理解」することと「実行」することの間には、大きな壁がある。折に触れて「その施策は、顧客との信頼関係構築につながるか」に立ち戻ることが大切。
講師
・河野貴伸氏 ブランディングのあらゆるサービス・テクノロジーを提供するFRACTAを設立。EC-CUBEエバンジェリスト
・松岡芳美氏 企業のブランド構築、リブランディングを専門にコンサルティング・支援を行うブランディング・ディレクター、アートディレクター。
過去2回の勉強会では、「ブランディングの本質とは、消費者との信頼構築である」こと、そして信頼関係を構築・維持するために必要な「ブランディングの指標の設定と、それに基づく正しい評価」の方法を学んできた。
最終回となる第3回では、実際に行われた成功例・失敗例を概観しながら、これまでの学びを振り返りつつ、ブランド担当者が身に付けておきたい実践的なテクニックを学んだ。
「現在」の顧客像を正確に把握する
河野氏が最初に紹介したのは、ある雑貨ブランドXのリブランディングプロジェクトだ。そのブランドは、コアファンは存在するものの、ブランド自体の立ち位置が曖昧であることに課題を抱えていた。そこで、ブランドイメージをより洗練されたものへと刷新し、商品ラインアップも再編成した。ところが結果は、来店者数・売上ともにダウン。河野氏は「要因は、ターゲット及びペルソナ設定の不完全さにあります」と指摘しながら、同ブランドの顧客を利用金額や頻度によってマッピングし、「優良」「準優良」「成長株」「離反」のランク付けを行ったユーザー分布グラフを提示した。これに基づいて分析したところ、ブランドXのユーザーは「成長株」が圧倒的に高い割合を占めていたという。
「成長途中のユーザーが多いにも関わらず、一部のコアユーザーをリブランディングのターゲットに設定してしまった。この事例から、リブランディングにおける最大の注意点は『いま成長中の顧客を、どのように移行していくか』だと教訓を得ることができます」(河野氏)。現時点のメイン顧客は誰か、また顧客分布はどのような状態かを把握した上で戦略を立てる必要があるとまとめた。
すべての関係者が共有できる「資料」が必要
また、家電ブランドYの事例を用いて、「ブランディングを目的にオウンドメディアを拡充したものの、目的から逸れてしまい、問題が複雑化した」ケースを紹介した。商品に付加価値をつけ、低価格ブランドから脱却することを目的に、メディアづくりがスタート。コンテンツの企画・制作はパートナー企業に外注した。すると、コンテンツは話題になったものの、「面白い」というイメージが先行し、狙ったブランドイメージをうまく訴求できない事態に陥った。低価格ブランドからの脱却は叶わず、期待した効果が出ない焦りが外注先へのプレッシャーを増幅させたほか、施策の意義を見失った社内に喪失感が蔓延する惨憺たる結果を招いてしまった。
河野氏は、ブランドYが外部パートナーに「メディアをつくる意味」と「ブランドの全体像」を伝えきれていなかったと分析。ブランディングに関わるすべてのステークホルダーが共有できる「ブランド資料」の作成が必要不可欠だと指摘した。
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