FRACTAブランディングスクール【3】その施策は、顧客との信頼関係構築につながるか

顧客参加型・社員参加型の効能

失敗例からは、企業の“独りよがりのブランディング”では目的が達成されないばかりか、かえって悪影響を招くことすらあることが分かった。この状況を防ぐため、現在では「顧客とともにブランドをつくる」ケースがいくつも生まれているという。「例えば、ユーザー参加型のコンテンツとしてコンテストプログラムを用いながら、顧客の言葉で語られる『商品とのエピソード』や『ストーリー』を集める方法があります。また、コアユーザーにブランドの良さを広めてもらう『アンバサダープログラム』を採用する企業も増えている。

すでにロイヤリティが高い顧客にブランディングへ参加してもらうことで、目的を見失ったり、ユーザーとのすれ違いが生じたりといったことを避けられます」(河野氏)。

一方、松岡氏は、全社員がブランドづくりに関わる仕組みをつくることで合意形成を図り、成功した事例を紹介した。ファッションブランドZでは、社員自身が「ブランドコンセプトは、自分たちのものである」と愛着を持つことが必要だと考え、外部のコピーライターに頼らず、社内でブランドコンセプトを策定した。

数日間のワークショップの中で、ブランドを徹底的に分解し、コンセプトをつくり上げるまでのプロセスをいくつかに分け、「個人の作業」→「グループディスカッション」→「発表」を何度も繰り返したという。

「議論しながら形にする。これを何度も繰り返したことで、社員の意識が統一されていきました。さらに、ブランドを大切にしていこうという共通の意識も芽生えたのです。ワークショップは、参加メンバーの人間関係への理解や、決裁者との距離感など、その場をファシリテーションする人の力量が結果を左右する部分も大きい。実施の前に、参加者同士の関係性をつくるための簡単なグループワークを行うなど、土台づくり・下準備も重要です」(松岡氏)と説明した。

最後に河野氏は、第1回勉強会で得た共通理解である「ブランディングにおいて最も重要なのは、消費者との信頼関係構築である」ことを改めて強調した。実例を通じて分かるように、頭で理解することと、それを実行することの間には、大きな壁がある。折に触れて「顧客との信頼関係を築けているか」「今行っていることは、そのための行動になっているか」に立ち戻りながら、ブランドに携わる人の意識・行動を変えていくことが、ブランディング成功の秘訣だと締めくくった。



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