【前回】「メンタリストDaiGoとファンドマネージャー房広治が語る「コンサルティングの心理学」【前編】」はこちら
M&Aにおける心理戦
DaiGo:M&Aはそもそも心理戦ですよね。オックスフォードには「ブラフィング」というテクニックがありますよね?
房:オックスフォードというよりも、英国人の知恵・テクニックですね。英国人は、本当はわかっていない質問をされても、わかっているふりをすることがよくある。また、答えると自分の都合の悪い状況では、うまく、質問をかわす。イギリス人は話すのもうまいし、交渉もうまい。
DaiGo:「ブラフ=はったり」ですよね。僕はテレビでババ抜きをしますが、パッと相手を見た瞬間に、「あなたはこういう性格なので、真ん中と両端には絶対にババはないですね」と決めつけます。そして相手の顔を観察するんです。これが「ブラフ」です。
もし図星だったら、相手は「読まれた!」と思って緊張します。決めつけに対する相手の反応を見て、心理を読んで探る。メンタリストは、「プッシュステートメント」というこの手法をよく使います。M&Aの心理戦と近いですよね。
房:私はM&Aの交渉では、相手のブラフをわりと読める方だと自分のことを思っていましたし、実際に読んできました。ですが、最初にDaiGoに会った時に、DaiGoは全然違うレベルで、自分は全然相手にならないということを思い知りました。
DaiGoがナプキンに何かを書いて、それを僕の前に置いたんです。そして「6色の中から5色を順々に選んでください」と言うので、5色を選びました。その後、DaiGoがナプキンを開いたら、私が選んだ順番がそこに書いてあったのです。これはもうDaiGoに対抗するのは無理だなと。
DaiGo:すいません…(笑)
房:結局、DaiGoの場合は、誘導しているんです。彼が予想した順番から、私が外れそうになると、考え直させて違う色を選ばせる。私は、彼の思い通りの行動を取らされていたのです。
DaiGo:みんな、自分はすべて自分の意思で決定していると思っていますが、実はそうではなく、本当は周りの環境や反応にかなり左右されているのです。
価格決定で面白い実験があります。花瓶の価格を決めてもらう実験で、事前にゲームをしてもらいます。Aグループは1から1000までの数字しか出てこないゲーム、Bグループは1000から2000の数字しか出てこないゲームです。ゲームの後で価格を付けてもらうと、Aグループは1000円以下の値段をつけ、Bグループは1000円以上の値段をつけます。値付けとはまったく関係ないゲームの数字に影響を受けているわけです。ただし、本人たちは影響を受けていることに気づいていません。これが「プライミング効果」です。
相手の感情を読む学問もあります。表情物理学では、顔の表情筋の組み合わせから感情を読み取ります。一番わかりやすいのが口のまわりにある口輪筋で、リラックスして口が軽く開いていると「YES」のサイン、緊張してきゅっと結んでいると「NO」のサインです。
広告会社の皆さまはプレゼンする時は、相手の口を観察しながら行うといいですよ。NOのサインがでたら、その部分は飛ばして、YESのサインが出ているところを厚めに説明すれば、相手の心に刺さるプレゼンや交渉ができます。
能勢:では、どうやってその技術を習得すればいいのでしょうか?自分の読みが当たっているかどうかは、相手にしかわかりませんよね。
DaiGo:練習して、正解率を上げていけばいいんです。
能勢:周りの人に練習台になってもらえばいいのですね。
DaiGo:CIAなどに表情分析のプログラムを提供している心理学者、ポール・エクマンがWebサイトで表情分析のプログラムを提供しています。そういうものを使って練習するのもいいかもしれません。
それに、ゲームの「人狼」もお勧めです。自分が嘘をついたり、相手の嘘を見破ったりしないといけませんし、最後に答え合わせができますから、いい練習になると思います。