CMは1億人を相手にできる仕事
神谷監督は、企画を受け取った時点で、自分の中で勝負するポイントを1つに絞り込むという。「ひたすらかわいくする、このオチを絶対に面白くするなど、自分の中で決めています。それは僕にとっては絶対に負けてはいけないギャンブルのようなものです。元々僕はすごくギャンブラー体質で、競馬やパチンコでは運がないのでよく負けるんですが(笑)、幸いなことにその分CMは当たる確率が高いみたいです」。
ギャンブルと言っても、一点突破の一点を決める過程は、競馬の予想のようにとことん“理詰め”だ。「企画、タレント、音楽などの要素を頭に浮かべながら、企画が弱ければタレントを強くするなど、何を加えれば強くなるかを徹底的に考え抜きます。広告は注目されて初めて“広告”になります。1人でも多くの人に受けたいので、アップをここで入れる、踊りも変わったものにする、脇役との絡みで可愛さを強調する…などと積み重ねていって、最終的にバーンと突き抜けたらいいなと。各要素を頭の中でパズルのように何度も組み合わせ、ぼーっとテレビを見ながら想像して、理想の15秒が組み上がるように構成しています」。
最後に、神谷監督はCMの仕事について次のように話した。「映画はどんなに興行成績がよくても数人に1人が見る程度ですし、テレビ番組だって視聴率20%でも5人に1人です。でもCMが国民的ヒットになれば、“日本中の誰もが知っている”状態になる。CMは1億人をドカンと沸かすことができる仕事なんです。それは僕にとっては大きな快感だし、次の仕事に向かうエネルギーにもなっています」。
- 企画を受け取ったら、自分の中で勝負するポイントをひとつに絞り込む。
- どこかダメな要素や欠点が入ることで、愛されるCMになる。
- 企画、タレント、音楽などの要素をパズルのように掛け合わせ、結果が最大化するように考える。
神谷佳成(かみや・よしなり)
1987年慶應義塾大学法学部卒業後、テレコムジャパンに入社。その後第一企画(現アサツー ディ・ケイ)を経て、1997年よりフリー。主な仕事にセガサターンせがた三四郎シリーズ、アイフル チワワシリーズ、新垣結衣・忽那汐里出演の江崎グリコ ポッキーチョコレートシリーズ、最近作に日本コカ・コーラ ジョージアシリーズ、NTTドコモ 料金シリーズ・dポイントシリーズなどがある。つばさ証券などでカンヌライオンズを3度受賞。ダンスノットアクト創立メンバー。
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