レイ・イナモト氏も選考に参加、トヨタがオープンイノベーションプログラム開始

自前主義にはこだわらない

12月7日、トヨタ自動車(以下、トヨタ)は、オープンイノベーションプログラム「TOYOTA NEXT」 の開始を発表した。

「TOYOTA NEXT」は、トヨタが持つビッグデータなどのアセットを参加者に提供し、提示された5つの募集テーマに沿った、新たなサービス案を社外の企業や研究機関などから募集するというもの。いずれのテーマも、「人を中心とした」新しいモビリティサービスの開発を目的にしている。12月7日~2017年2月20日までの募集期間終了後に選考プロセスを経て、選定先とサービスの共同開発も予定している。発表されている概要一部は以下の通り。

<募集テーマ>

1.全ての人の移動の不安を払拭する安全・安心サービス
2.もっと快適で楽しい移動を提供するクルマの利用促進サービス
3.オーナーのロイヤルティを高める愛車化サービス
4.トヨタの保有するデータを活用した ONE to ONE サービス
5. 全国のトヨタ販売店を通じて提供するディーラーサービス

<トヨタが提供可能なアセット>

1.ビッグデータ コネクティッドカーから取得可能な情報
2.タッチポイント (ディーラーネットワーク 、オウンドメディア等)
3.製品/サービス

その他募集概要、詳細は「TOYOTA NEXT」サイトにて公開している。

発表会で提示された、プログラム参加者に提供可能なビッグデータの一例。

発表会で提示された、プログラム参加者に提供可能なビッグデータの一例。

デジタルマーケティング部を新設

プログラム開始当日には、報道関係者向けの発表会が開催された。

発表会に登壇したトヨタ自動車・常務役員の村上秀一氏は「トヨタがこれまで80年にわたり、継続してきたビジネスモデルが、通用しないほど環境が大きく変化している。今は、創業以来の大変革期。未来に向けたを目指し、今年初めより『J-ReBORN』プロジェクトを進めてきたが、今回のプログラムもこのプロジェクトの一環。これまでの自前主義にとらわれず、また提携の形も業務・資本提携、投資、ジョイントベンチャーなど、その形態にはこだらない。できることから速やかに具体化していきたい」と話した。

トヨタ自動車 常務役員 村上秀一氏。

トヨタ自動車 常務役員 村上秀一氏。

また村上氏はトヨタ内における、未来に向けた変革の取り組みの鍵になるものとして「クルマの電動化」「クルマの知能化」「クルマの情報化」の3点を挙げた。「クルマの情報化」については一人の顧客に対して複数付与されている、IDを統合化する『One ID TOYOTA』とコネクティッド戦略が中核になる存在。

『One ID TOYOTA』戦略はトヨタと各ディーラーなど、これまでバラバラになっていた顧客接点を統合する他、今後普及させていくコネクティッドカーを介して、クルマの所有者の利用動向や設備の劣化状況もデータとして把握、統合し、より適切な顧客コミュニケーションに生かしていくとしている。

トヨタでは、これらの戦略を具体化するに際し、今年1月にはデジタルマーケティング部を新設。発表会に登壇した、デジタルマーケティング部の浦出高史部長は「部の役割は、デジタル上のお客さま接を統合するなど、マス中心だったコミュニケーションのあり方を見直す、情報インフラを組み立て、よりお客さまにとって使いやすいサービスのあり方を目指す、コネクティッド戦略の3つ」と話した。

イノベーションの民主化が起きている

発表会には募集アイデアの選考にも参加するInamoto & Co. 共同設立者 クリエイティブ・ディレクターのレイ・イナモト氏、デジタルガレージ 執行役員 SVPの佐々木智也氏がトークセッションに登壇した。

レイ・イナモト氏は今、オープンイノベーションが求められる背景について「20世紀のイノベーションは企業内だけで閉じたものだった。それが21世紀になると、個人であってもよいアイデアさえあればイノベーションを起こすことができる、イノベーションの民主化が起きている」と話し、このイノベーションの民主化が、企業がオープンイノベーションの取り組みを強化する背景にあると説明した。

前述の2名に村上氏、浦出氏らが加わった、本トークセッションでは「ヒューマン・セントリック」という言葉が多く登場。「TOYOTA NEXT」で、人を中心にした新しいサービスのアイデアが出てくることへの期待をにじませた。

トークセッションの模様。

トークセッションの模様。


選考のポイントを聞かれ「機械に代替されることのない人のアイデアと情熱」と話す、レイ・イナモト氏。

選考のポイントを聞かれ「機械に代替されることのない人のアイデアと情熱」と話す、レイ・イナモト氏。

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