ACCのホームページで入賞ラジオCMが聴ける
権八:現場でも言われていて、今聞いていただいてもわかると思いますが、ちょっと作品に出来不出来があるんですよね。CMプランナーが実際にアルバイトをしている素人の方と相談しながら、若い人達の実体験をベースに歌をつくっているらしくて。それでバイトをしている場所まで出向いていって、録音してるという。
リアルな肌触りというか、まさに今の時代をちゃんとすくい取ってる感じがあって。と同時に、誰しも経験があるようなアルバイトの青春を描いていて。その普遍性を捉えていくという感じも僕は好きで。特に「店長とあのバイト、また休み一緒やん」、この歌詞はなかなか(笑)。他にも、「東京に出て初めて友達ができた、バイト先の畑中さん」「バイトでしか呼ばれないあだ名、あなた持ってますか」など、わりと珠玉のフレーズもあって。あとは何と言っても歌が下手だったりする(笑)。
中村:面白いですよね。
権八:そこが思わず笑ってしまって。ただ、もしかしたらもうちょっと全部が面白くて、バーッと来ていたら、結果はわからなかったですよね。
澤本:そうね。形としてはこのほうが新しい形には見えるじゃない。きちんとつくりこんだりしないで、ある程度の偶然性と、その場の流れに任せて。色々なバイトの人を取材して、歌ってもらうというね。この企画は大きな企画の枠組みとしてすごくいい。
でも、できたものとして全部がいいわけじゃなくて、たぶんつくったなかで良いものを選んでると思うけど、まだバラついていたというので、ちょっともったいなかった。そのあたりのせめぎ合いですよ。作品として完璧なのは優勝したキンチョールで、大枠の企画はいいけど、バラつきがちょっとあったのがこっち。今回は大枠じゃなくて、作品を選んだという流れだったと。
権八:どっちが正しいというわけでもないしね。だから、マイベストジョブはそういうトライアルというか、挑戦的な企画性があった。企画賞でしたよね。
澤本:そう、企画賞あげたんだよね。
中村:なるほど。澤本さんは審査委員長だったので、あまり自分では「これ」と言わなかったと思うんですけど、最終的に投票したのは・・・?
澤本:僕はキンチョールに入れましたね。橋本さんが言ったという理由もありますけど(笑)。まぁ、それは冗談で、去年と一昨年でワコールがグランプリで続いて、ワコールのときも誰かにインタビューした、みたいな作品だったんです。素人っぽい感じでインタビューというものを編集によって面白くするCMという一群があって。
だから、みんながそっちばかりに向くよりは、「ちゃんとした原稿をつくる」「ちゃんとした演出をする」「役者さんもちゃんとしてる」というほうにちょっと目を向けたほうがいいかなと思ったので。ある種、完璧なラジオCMということで、これを選んだ気がしますね。
権八:それはありますね。流れというか、毎年の経緯というか。
澤本:ラジオって行数を音で埋めていればラジオCMだから、何やってもいいんだよね。あまり片方に偏るよりは、色々なものがあってもいいし。何やってもいいと言えばいいから、それこそダイバーシティというんですかね。色々な方向や世界がラジオCMでできるといいなと思ってますね。
中村:なるほど。他の作品もホームページで聴けるんですかね。
澤本:そうです。ホームページで発表になったらしばらくは、どういうものが金賞、銀賞、銅賞になったか、ACCのホームページで聴けますので。今のラジオCMもそうだし、今聴けなかったラジオCMも聴けるので、ぜひ聴きに行っていただければと思います。
中村:この第56回ACC CMFESTIVALは入賞作品発表会というものが11月30日の東京を皮きりに以降、全国なんと30カ所で開催するというので、そちらのほうにも足を運んで見てください。これは澤本さんもゲストで来られる回があったり。
澤本:そうですね。全部は行けないんですけど、いくつか行って。行くと、ラジオやテレビCMが聞けますので、ぜひ。
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構成・文:廣田喜昭