Webメディアへの信頼が揺らぐなか、課金型メディアが新たな局面を迎えている

クオリティメディアが大逆襲?

図1 トランプ氏勝利確定後、反トランプ陣営メディアへの購読者、寄付金が伸びたことを伝える記事

「After Trump’s win, news organizations see a bump in subscriptions and donations(トランプ勝利の後、報道機関各社に購読申込や献金の増加の波)」との報道がある。

「ProPublica」「New York Times」「Atlantic」「Washington Post」などブランドのあるメディア、さらに言えば“トランプ反支持派メディア”は一様に購読者を増やしたという。アクティブな反権力志向で有名な「Mother Jones」などには、通常の10倍近くの寄付金が開票日前後に集まった。

FTは今年、イギリスのEU離脱を決する国民投票時に、報道を一時的にフリーアクセスにすることでアクセス数をいっきに増やしたうえ、通常時の6倍の購読者を得た(「How the FT drove digital subscriptions sales by 600 percent over Brexit weekend」)。

さらに米国大統領選でもFTやNYTは短期間のフリーアクセスを実施し、購読申込数の大幅な伸びを実現したという。「New York Times reports 41,000 new subscribers since the election(NYT、開票日以降1週間で4万人超の購読者増を公表)」という記事でも、NYTが2011年にペイウォールを開始して以来の最大の伸びだと報じている。

NYTは、2016年9月に購読者が160万であることを発表しているが、その後の大統領選の白熱化や海外からのアクセス増で、新規購読者数が昨年比10倍の水準にまで跳ね上がっている。同社CEOのMark Thompson氏は、明確な時期こそ示さなかったものの「1000万購読者が見えてきた」と強気の姿勢を打ち出した(「Newsonomics: The New York Times is setting its sights on 10 million digital subscribers(NYT、1000万購読者を視界にセット)」。

一方の、FTも電子版の成長が著しい。この11月末に、ついにデジタル版の収入がプリント版を上回ったことを公表したのだ(「The Financial Times passes another major digital milestone(FT、もうひとつのデジタル上の重要な指標を突破)」。既にデジタル版の購読者数がプリント版を上回ったことは公表していたが、総収入でもデジタル版が上回ったことは大きなマイルストーンになったと記事は述べる。

次ページ 「新興メディアでも、クオリティメディアが躍進」へ続く

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藤村 厚夫(スマートニュース)
藤村 厚夫(スマートニュース)

90年代を、アスキー(当時)で書籍および雑誌編集者、および日本アイ・ビー・エムでコラボレーションソフトウェアのマーケティング責任者として過ごす。

2000年に技術者向けオンラインメディア「@IT」を立ち上げるべく、アットマーク・アイティを創業。2005年に合併を通じてアイティメディアの代表取締役会長として、2000年代をデジタルメディアの経営者として過ごす。

2011年に同社退任以後は、モバイルテクノロジーを軸とするデジタルメディア基盤技術と新たなメディアビジネスのあり方を模索中。2013年より現職にて「SmartNews(スマートニュース)」のメディア事業開発を担当。

藤村 厚夫(スマートニュース)

90年代を、アスキー(当時)で書籍および雑誌編集者、および日本アイ・ビー・エムでコラボレーションソフトウェアのマーケティング責任者として過ごす。

2000年に技術者向けオンラインメディア「@IT」を立ち上げるべく、アットマーク・アイティを創業。2005年に合併を通じてアイティメディアの代表取締役会長として、2000年代をデジタルメディアの経営者として過ごす。

2011年に同社退任以後は、モバイルテクノロジーを軸とするデジタルメディア基盤技術と新たなメディアビジネスのあり方を模索中。2013年より現職にて「SmartNews(スマートニュース)」のメディア事業開発を担当。

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