今やコピーライターの仕事は、そんなに狭くない、浅くない。「言葉をフックとしたビジネス起こし」みたいなベクトルに変貌しつつあります。不思議なことにコピーライターの多くは、そこらへんの仕事の実態を語らないんだなぁ。なぜでしょうか。ま、語れない事情もあるとは思いますが。
そんなわけで、今回、真面目に、コピーライティングの「今どきの実態」「今からの未来」を書いてみたいと思います。
黒澤晃 Akira Kurosawa。
横浜生まれ。東京大学国史学科卒業。1978年、広告会社・博報堂に入社。コピーライター、コピーディレクターを経て、クリエイティブディレクターになり、数々のブランディング広告を実施。日経広告賞など、受賞多数。2003年から、クリエイティブマネージメントを手がけ、博報堂クリエイターの採用・発掘・育成を行う。2013年退社。黒澤事務所を設立。東京コピーライターズクラブ(TCC)会員。
変わりつつある、コピーライターへの「仕事のニーズ」。
数年前から、うすうすとは気付いていましたが、フリーになってみるとその気付きは鮮明になりました。私が手がけた(ている)仕事をいくつか、ご紹介しましょう。
1.あるNPOの立ち上げ
NPOの趣意書を考えて欲しいという依頼。どういうNPOにするかの根幹の部分、ビジョンづくりの部分、どういうふうに運営すべきかの部分を、A4用紙2、3枚にコンパクトにまとめたい。その趣意書をもとに、行政に届けを出したり、ホームページをつくったり、簡単なリーフレットをつくったりしたい、それがないと活動できない大切なものなので、ぜひ!というオーダー。
2.新しい話題の技術を生み出した中小企業の社長
話題の技術をもとに商品をつくり、魅力あるブランドに育てていきたい。ついては、そのストーリーを言葉化したいので、一緒に考えてほしい。今はBtoBビジネスだが、その商品からBtoCに拡張していきたい。
3.地方のデベロッパー
周年事業のため、社史づくりを考えている。しかし、なかなか一つにまとまらない。しいては、社長や役員が書いたものに赤字を入れて編さんしてほしい。それをホームページに展開したい。またこれをきっかけに、社の未来を考えていきたいし、企業スローガンも新しくしたい。そのお手伝いをしてほしい。
4.コンサルティング会社
職種の呼称を変えたいというオーダー。いいものができたら、大きく打ち出してゆきたい。今の呼称は古くさいので、もっと今の人のインサイトに訴えるものにしたい。
どうでしょうか。もちろん、日頃のオーダーのなかには、キャッチフレーズを書いてくださいという依頼もあります。しかし、メディアありきで、そこに言葉をつけてなんぼ、という「職業的ニーズ」は減少しているし、今後さらに減るように感じます。
メディアをチョイスする手前の、もやもやとしたカオスのなかに踏み込み、真の価値を発見し、言葉という共通認識を生み出しやすいカタチに定着させてゆく。そんなイメージが今のコピーライターの仕事なんだな、と思ったりします。
カオス。そこが大切なポイント!
現代社会では、カオスはますますカオスになっていくわけです。そんな答えなきビジネスの時代に、コピーライティングは大きな役割を与えられつつあります。それは、言葉は人の思いを一つにする力があるから。言葉は見えなかったものを見えるようにする力があるから。そして、コピーライターはその力を縦横無尽に使えるプロだから。
確かに、キャッチフレーズが鎮座するグラフィック広告は昔より減ってきています。そして、もうコピーライティングがその居場所にこだわる時代も終わりつつあります。そして、カオスから生まれた新しいニーズを受け取りつつ、職業の深さや広さ、面白さを拡張している時代だと思うのです。
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