「SNS上で活躍するクリエイター」をマネジメントする、世界に他にない会社
佐渡島:僕は今後、世の中の全てがゲーム化していくと思ってるんです。
澤本:ゲーム化?
佐渡島:「小説やマンガを読む」というのも、「一直線上に物語を楽しむ」というシンプルなゲームだと思っていて。今後はポケモンGOみたいな形で、リアルな世界にどうやってゲームを被せるかという時代に変わっていくと思うんです。そうなったときに、アナログゲームをつくっている人はゲームを設計できる可能性があるので、一緒にやってみようと。
権八:つまり、色々なコンテンツに出会うのはもうSNSだと。
佐渡島:そうです。世間的にはまだわからないかなと思います。それはなぜかというと、ユーチューバーの会社はありますが、ツイッターをはじめとしたSNS上で活躍するクリエイターをマネジメントする会社って世界中にないんですよ。うちしかなくて。だから、今うちで色々なデータ分析をやっていますが、「これは俺らしかやってないね」ってエンジニアと話していて、超ワクワクしてます。
今、日本人でTVを一回も見たことないって人はいないと思うんですけど、YouTubeを一回も見たことないという若い人もいないと思うんです。映像やインスタグラムは受動的なメディアで、僕は「受動的なメディアは文化をつくるけど、文明はつくらない」と思ってるんです。
澤本:文化はつくるけど、文明はつくらない?
佐渡島:たとえばピコ太郎みたいなものって、1カ月間は影響を残しますが、100年後には残らないですよね。でも、『宇宙兄弟』によって挑戦するマインドみたいなものは残ると思います。「宇宙兄弟を読んで行動を変えました」という人達がつくった会社によって、世の中が変わったりして、文明を変えていくということが起きるだろうなって。
権八:影響力というかね。
佐渡島:そうですね。だから、コンテンツには文明に影響を及ぼすものと、文化に影響を及ぼすものの両方があると思っています。受動的なコンテンツは文化への影響が大きくて、能動的なタイプのものは文明へ影響を与えられるのではないかと。
受動的なコンテンツのほうが受け取る人が多いので、ビジネスの立ち上がりは早いですね。一方で、インターネットの中は課金するのが難しいので、本をはじめとした能動的なコンテンツのビジネス化は難しい。僕はそこに挑戦しようと思っています。ちなみに、出版物だけで言っても、この10年で約3倍になってるんです。
権八:え、出版物が?
佐渡島:そうです。本屋さんに並んでいる新刊は3倍の量になっています。だから、すぐに出版社に返品されちゃうので見つけてもらえないんですよ。
中村:回転が早くなっちゃったんですか?
佐渡島:早くなってます。
澤本:じゃあ、よく一般に勘違いとして「出版物自体は減ってる」という印象があるけど、じつは出版物自体の数は増えていると?
佐渡島:そうです。出版点数は増えてますが、総量は減っていってるんです。なかなか売れないから、みんなもっともっとつくって、自転車操業をしているという状態。出版物は3倍出てきたとしてもグルグル回転してるから、書店に並んでる数は一緒で、一定の情報量がずっとあるように思えるじゃないですか。
ネットの中にはずっと情報が溜まっていって、過去のいいものが売れていくので、等比級数的にグワーッと増えていくわけですよ。だから、この後、5年、10年経つと、新しいコンテンツの見つけ方はどんどん難しくなっていきます。アマゾンみたいなところのバックヤードは延々と大きくできちゃうので。だから、出会いはSNS上の偶然だけなんですよ。
澤本:つまり、10年前につくられたものでも、SNS上で急に出会っちゃったら新刊と同じようなことが起きていくと?
佐渡島:そうです。たとえば、『宇宙兄弟』がツイッターをやってなくて、作者の小山宙哉さんがずっと『宇宙兄弟』だけをやって、作品が終わったとするじゃないですか。その後に小山さんが新作をつくろうとすると、今10万部ぐらいしか売れていない『モーニング』の読者しか知る機会がないんです。それに比べて、今、小山さんはフォロワーが6、7万人いるので、その人達は「宇宙兄弟の作者の作品だったら一度読んでみよう」と読んでくれますよね。
澤本:そうか、そういうことか。
佐渡島:だから「ストック型」に変わっていくはずなんです。SNSは単発の拡散じゃなくて、人間関係や顧客名簿をストックできると。クリエイターが自転車操業じゃなくて、長期的に自分のやりたいことをやれる、という仕組みへと変えていくんです。クリエイターが今すぐお客の興味を惹かなくてもいいとなると、つくるものが変わっていくはずなんです。
たとえば、『宇宙兄弟』が終わった後に「次、何かやります?」となったときに、当てないといけないとなると、『宇宙兄弟2』をやっちゃうか、ムッタを主人公にして違う物語にするか、ということをどうしてもやっちゃいますよね。でも、読者が小山宙哉というクリエイターのファンになっていたら、0から全く違う物語をつくろう、というチャレンジができるんです。