心理テストで「ヒットを生み出す編集者」になれるかわかる?
佐渡島:あるんです。最近はそんなに更新されてないと思うんですけど、その教科書によって強いチームをつくって、ジャンプを強くしたんです。
澤本:じゃあ言い方は変ですが、人間力と言っているときには活躍できなかったような人でも、教科書を読んでやったら当たったということが起こったと。
佐渡島:そうだと思います。それは可能だろうなと思います。
澤本:とは言えですよ。プレイヤーとして編集者があるとすると、それに対する「向き、不向き」はあるじゃないですか。それは見ればわかるんですか?
佐渡島:ちょうど今朝、ここに来る前に学生を6人ぐらい集めて会話をしてたんですけど、僕は作家を見て、向き、不向きを見極めるのは結構できるんですけど、20代ぐらいの人間にはまだ大量に会ってないので、見極められてないんですね。それで今は半年から1年間で千人ぐらいの学生と会って、対話するというのを自分の目標にしています。
澤本:千人ですか!?
佐渡島:千人ぐらいに会わないとわからないので。僕自身も心理テストを受けていて、最近、面白い心理テストで人間の特徴を「凝縮性、弁別性、拡散性、保全性、受容性」の5つに分けるというものがありました。
中村:1個もわからない(笑)。
佐渡島:その心理テストが独自に使っている言葉だと思いますよ。凝縮性のある人はある種、思い込みが激しいんです。僕の仕事は人にアドバイスするじゃないですか。人に「こっちのほうがいい」とアドバイスするわけです。それは思い込みじゃないですか。
中村:そうですよね。「なぜなら俺が思ってるからだ」ということですもんね。
佐渡島:脚本の直しも「こうしたほうがいいですよ」って、超傲慢ですよね。書けないくせにこっちのほうがいいと言うんだから。
一同:(笑)
佐渡島:だから、「こうしたほうが絶対にいいんだ」という思い込みが強いタイプの人間は編集に向いてるのかなと。でも、さらに編集に向いてるのは、人のことを受け入れることができる受容性も高い。ほとんどの人は受容性が高いと凝縮性が低いんですよ。
澤本:へー、面白い。凝縮性と受容性の数値が高い人は向いてると。
佐渡島:両方が高いという。今、うちの会社で僕と三枝(亮介)と柿内(芳文)という、もともと出版業界で活躍していた編集は全員そうだったんですよ。
中村:思い込みパワーも強いけど、受容性も柔軟性も強いと。
権八:その心理テストを学生にもやらせてみて?
佐渡島:まだ学生にはやらせてなくて。うちの社内でしかやってないので、今、社外の有名な編集者に「ちょっと悪いんだけど、これ受けてくれない」と言って。心理テストを受けることにお金がかかるんですけど、うちが負担して、フィードバックしたりしてますね。
権八:なぜ受けてもらうかは、ちゃんとお伝えしてるんですか?
佐渡島:はい、「データが欲しい。あなたみたいな人の若い版を採りたいからちょっと受けてくれないか」と。
澤本:その最終目標は、凝縮性と受容性が高い人は編集に向いていると思ったら、若者にテストを受けさせれば、心理テストである程度わかるということなんですか?
佐渡島:そうですね。さらに、そこの会社の説明を聞いていると、色々な質問をしていって、その答えからどこが高いかを見極めたりできるので、それを言語化しようとしてるんです。
澤本:すごいですね。
佐渡島:だから今、うちの社員に言ってることがあるんです。マンガの読み方なんて教えないじゃないですか。僕も出版社に入って、別に教えられませんでした。僕は作家から原稿が送られてきたら、雑に読むんですよ。
澤本:雑に?
佐渡島:パーッと読んで、記憶に残るかどうか。それがまず読者なので。記憶に残るんだったら、もっと記憶に残すためにはどうしたらいいかと言って、丁寧に書き直させる。記憶に残らなかったら、記憶に残す核をつくらないといけないから、ゼロベースでいきなり作家と話し合いに行く。丁寧に読む必要もないぐらいの感じなんです。
澤本:雑にバーッと読んで、残らないと思ったら1からやり直しと。
佐渡島:そうです。でも、学生でこういう職業につくと、作家からバカにされたくない、わからない奴だと思われたくないから、いきなり丁寧に読むんですよ。自分が普段マンガ読むのと違うペースで。それで細かいところの直しを言うんだけど、読者はそんなところ気にしないじゃないですか。そういうことも全部言語化していかないといけないんですね。
澤本:それ聞くだけでも随分違いますね。
中村:まだまだ長々と話したいところではあるんですが、そろそろお別れの時間です。ありがとうございました。今夜のゲストは株式会社コルクの代表取締役社長、佐渡島庸平さんでした!
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構成・文:廣田喜昭