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いい上司・いい先輩の4つの条件
—箭内さんにとって、理想の上司・先輩って、どんな人ですか?
まず、僕は自分の人生を終えようという時、あと数日間あったら、きっとこんなことを思うはずです。「あ~、今回の人生、理想の上司・先輩みたいなところからは逃げてきちゃったな」って。僕は、ちゃんと厳しくできないんですよ。ダメだと思いながらも、注意したり怒ったりするのが、面倒臭くなっちゃうんです。なかなか本人にピシャリと言えない。
逆に言うと、「切り捨て型」なんですよね。諦めてしまう。愛がまったくないとも言えるし、「ここにいて、俺に見捨てられているよりも、絶対もっと良いところがあるぞ」っていう、別の意味での愛とも言えるかもしれない。
「切り捨て型」っていうと冷たく聞こえるかもしれないけれど、愛を持って熱く厳しく育てるみたいなことは、できない弱腰なんです。負の感情を持ちたくないし、人にも持たせたくないと思うと、そうやって逃げていくしかなくなる。弱腰平和主義。平和主義とすら言えないかもしれませんが…。
—理想の上司・先輩にはなれないという箭内さんですが、「いい上司・先輩」の条件とはなんだと考えますか?
1)一生忘れられない一言を言う。
相手が一生忘れない、一生の勇気やお守りになるような言葉を、どこかのタイミングで、一回だけでもいいから言えることなんじゃないかと思います。もちろん簡単なことじゃなくて、それを本当に思えること、本当に言えること、言ったからには腹をくくって、その言葉の責任を取らないといけない。自分がその域にたどり着いてないと絶対言えないんですよね。その一言に、人間が出るんじゃないかと思います。
言葉って、やっぱりすごく大切です。今だから言えることですけど、佐々木宏さんがシンガタをつくったのと同じ時期に僕は博報堂を辞めたんですが、「やっぱり辞めるべきじゃないんじゃないかな、どうなんだろう」って一瞬不安になったときに、佐々木さんが「世の中にはセンスのある人間とない人間の2種類しかいない。だから大丈夫」って言ってくれて。
今あらためて思い返すと、よく意味がわからないんだけど(笑)、「お前にはセンスがあるから安心しろ」って言いたかったんじゃないかと。そしてそのときは、そのたった一言だけで、ものすごく心強い感じがしたんですよね。「お前にはセンスがあるよ」ってストレートに言っちゃったら、また違ったんだろうなあ。こちらに考える余白を残しながら、断言するというか。
2)守るときは守る。
“守ってくれている”感も必要だと思います。博報堂時代、何度も僕がマズいことをしたときに「お前は悪くないよ」と言ってくれた上司や先輩には、何か頼まれたらもう一生断れないです。僕には、そんな関係の人が3人います。