箭内さん!理想の上司・先輩ってどんな人ですか?

3)その職業を輝かせる。

僕のラジオ番組『風とロック』(TOKYO FM、JFN各局)のディレクターを見ていると、彼は後輩たちに愛情を持って厳しくしているんです。それは、ラジオの未来を本気で考えているからなんですよね。

また、トップランナーのMCをやっていたとき、例えばフリークライマーや素潜りする人とか、どちらかというとまだマイナーな競技の選手は、その競技の魅力を一人でも多くの人に知ってもらいたいという使命感を持って話すから、他の出演者とは姿勢がちょっと違うんですよ。だから、自分のことしか考えていない人は、理想の上司・先輩にはなかなかなれないんじゃないかなとも思います。

部下から見ると、会社って自分の“未来予想人”がたくさんいる環境ですよね。「自分の30年後はあんな感じか……」とネガティブに感じられてしまうのは寂しい。一人でも、他の人とは全然違うロールモデルがいたら、自分の未来は真っ暗ではないと思える。歳をとることも、その仕事を続けることも絶望的ではないんだって、年上の人たちが後進の憧れや夢になることって大事なんだと思います。

そういえば15年ほど前に、プロデューサーの残間里江子さんが僕にこんなことを言ったんです。「あなたの肩書きは何なの?」。「クリエイティブディレクターです」と答えた僕に残間さんは、「まだ世の中のみんなが知ってるわけじゃないその肩書きを、これからあなたが有名にしなくてはいけないわね。それがあなたの使命よ」と言いました。その後の自分のモチベーションにもなった言葉でした。

4)尊敬される努力。

尊敬される努力は、絶対にしなくてはならないと思います。「この人と一緒に仕事をすると、自分は何を得ることができるのか」、その期待と実感がないと、プロジェクトは前に進んでいかない。

その「得られる何か」っていうのは、何でもいいと思います。例えば、打ち合わせが楽しい、とかでも。一番良いのは、自分が知らなかった自分に出会えたとか、誰かにものすごく褒められたとか、そういう明らかな成果がいいですね。

実際に仕事をしている真っ最中はすごく苦しいし、二度とこの人とは仕事したくないって思うけれど、完成したとき、今までに経験したことのない新しい世界に連れて行ってもらえたとか、世の中を幸せにした実感があったとか。そういう、何かチームのメンバーに手渡せるものをリーダーは用意しなければならないし、リーダーにはそのための努力が必要だと思います。

次ページ 「いい部下・いい後輩の4つの条件」へ続く

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箭内 道彦
箭内 道彦

1964年 福島県郡山市生まれ。博報堂を経て、2003年「風とロック」設立。タワーレコード「NO MUSIC, NO LIFE.」リクルート「ゼクシィ」をはじめ、既成の概念にとらわれない数々の広告キャンペーンを手がける。また、若者に絶大な人気を誇るフリーペーパー「月刊 風とロック」の発行、故郷・福島でのイベントプロデュース、テレビやラジオのパーソナリティ、そして2011年大晦日のNHK紅白歌合戦に出場したロックバンド「猪苗代湖ズ」のギタリストなど、多岐に渡る活動によって、広告の可能性を常に拡げ続けている。東京藝術大学非常勤講師、青山学院大学非常勤講師、秋田公立美術大学客員教授、福島県クリエイティブディレクター、郡山市音楽文化アドバイザーなども務める。

箭内 道彦

1964年 福島県郡山市生まれ。博報堂を経て、2003年「風とロック」設立。タワーレコード「NO MUSIC, NO LIFE.」リクルート「ゼクシィ」をはじめ、既成の概念にとらわれない数々の広告キャンペーンを手がける。また、若者に絶大な人気を誇るフリーペーパー「月刊 風とロック」の発行、故郷・福島でのイベントプロデュース、テレビやラジオのパーソナリティ、そして2011年大晦日のNHK紅白歌合戦に出場したロックバンド「猪苗代湖ズ」のギタリストなど、多岐に渡る活動によって、広告の可能性を常に拡げ続けている。東京藝術大学非常勤講師、青山学院大学非常勤講師、秋田公立美術大学客員教授、福島県クリエイティブディレクター、郡山市音楽文化アドバイザーなども務める。

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