いい部下・いい後輩の4つの条件
—逆に、「いい部下・後輩」の条件を教えてください。
1)ムードメーカーであること。
一時期、「アー・ユー・ムードメーカー?」って僕はよく言っていたんですけど、ムードメイクをできることは大切ですね。本当は、先輩か部下かに関わらず、全員がムードメイクをできなくてはいけないと思うんです。
ムードを自らつくっていくことはもちろん、自分以外の人がムードをつくってくれることに甘えてはいけないけど、そのムードにちゃんと乗っかっていくことも大事で、それができている状態が、先輩と部下の良い関係なんだと思います。
2)“同志”になる。
例えば僕と木村透さん(博報堂)の関係は、先輩・後輩だったような、そうじゃなくて仲間や同志だったような、不思議な感じなんですけど。木村さんは僕より7年くらい上の人なんですけど、僕は木村さんにだけは「それって違うんじゃない?」とか「面白くないかも」って正直に言えたし、木村さんも僕に「何か他に切り口ない?」「どんなの書けばいい?」って聞いてくれました。社会人になって、初めてそういう人に会えたことは、自分にとってすごく大きいことでしたね。
それまでは、上の人が言ったことを、僕はただ「いいですね、いいですね」って言っていたし、後輩が言ったことに「いいじゃん、いいじゃん」って言いながら、あんまりピンとこないものをつくっていた。そういう場所から、木村さんが解放してくれたというか、違うステージに僕を上げてくれた。木村さんとの出会いがあってから、ようやく他の人ともそういう関係を築けるようになりました。
それと、僕が会社に入って1年目のあるとき、直属の上司が「箭内って誰をライバルだと思ってるの?」って聞いてきたんです。「お前、いま同期のやつを思い浮かべただろ?」って言われて、「いや、違いますよ」って答えたんですけど、図星でした。そのとき、その上司は「お前のライバルは佐藤雅彦であり、大貫卓也であり、佐々木宏だ」って言ったんです。
「この人、頭おかしいんじゃないか」とすら思ったんですけど、新人の僕にそういう志を持てっていうこと教えてくれたんだなって、ずいぶん後になってから思いましたね。
上司と部下の垣根が融けてくるというか、瓦解してくると、いいものづくりの場になるんですよね。井上嗣也さんや篠山紀信さんだって、僕が一方的に先生だと思っているだけで、向こうは別に弟子だとも思っていないだろうし。一緒につくる仲間だっていうふうに相手に思ってもらえる存在になれるかどうか。それがクリエイティブの世界なんだろうと思います。
先輩が考えたものを後輩が考えたものが凌いでいくというか、越えていくことがあるから、クリエイティブって面白いんですよ。1年目の新人が出した案が10年目の人が出した案に勝つことがあり得る世界だから。
だから、僕は学生に対しても、そういうふうに思うんです。今はもう「まったく、若いヤツはなっていない」っていう話では済まない世の中になっていて、若い人たちがどんどんすごいことをやってくれないと、次の時代がつくられない。東京藝大で教えるようになって半年以上経ちましたが、自分はそのために大学に行っているんだということに気がつきました。みんな、そういう意味では同志なのではないでしょうか。