2016年は企業とメディア、そしてエージェンシーの関係がダイナミックに変わり始めた1年だった。本誌の取材や調査結果からも、その変化の真っ只中にいると改めて感じる。
そのなかで2017年、企業の広報活動に期待されるのは①事実(ファクト)の力の最大化、②企業理念の浸透やブランド価値向上への寄与、③本質的な広報活動の成果に向き合うこと。以上3点だと考えている。
①については、偽のニュースが飛び交ったトランプ・ショックやキュレーションメディアの記事取り下げ問題からも明らかだ。「正しく」ステークホルダーに情報を届けるには、事実(ファクト)の積み重ねが必要とされる。
まさに「事実」で勝負するのが広報の仕事であり、求められる情報開示のスピードが年々早まるなかで広報が果たす役割は大きくなるだろう。
②は政府が進める「働き方改革」とも関係がある。編集部が2016年12月に107社の広報関連部門に実施した調査によると、9割が「企業ブランドの価値向上・強化に関心がある」と答えており、その理由として最も多かったのが「社内コミュニケーションの強化」(51・4%)だった。
今後ますます働き方の多様化が許容されれば、より社内広報の重要度は高まる。同時に、様々な企業の問題や内部告発が増えるなかでは、地道な企業理念の浸透こそが従業員満足度を高め、企業価値向上につながるということだ。
③の成果への考え方は、前述の編集部調査に寄せられた広報担当者のコメントも如実に変化しており、独自の指標を模索しようとする傾向がうかがえた。
長く広報効果測定で用いられてきた「広告換算値」が絶対ではないという点など、以前からある業界の慣習に対する問題提起が目立った。
最後に、当社が支援、協力する学校法人日本教育研究団が2017年4月、「社会情報大学院大学」を開学する。4月に創刊100号を迎える『広報会議』と連携しながら、企業、そして社会における広報のあり方を研究、実証していきたい。