Q. データ分析部門を設けるなら、どうチームメイクすべきですか?
A. まずは成果物定義と、会社全体のサポートが必要です
原田氏:これは業界ごとや、会社のステージ、新興企業か、老舗の大企業か、はたまた内資か外資かということもあるので、経験だけでのお話になります。
私が総研系シンクタンクを経て、入社した外資系ITベンチャーでは、いわゆるネットサービスを扱っていました。利用者の行動データからデザインの最適化を行い、利用率などを上げることに取り組んでいました。
最終的には、事業に関わるデータすべてを見て、戦略を立案しました。入社当時の約90人から、1年後には10倍の約900人になっていたので、そうした勃興期に携われたのは、本当によい経験になりました。
その後、2012年3月にリクルートに入社しました。同社では、就職や転職を支援するリクルートキャリアと、美容や旅行やグルメなどの情報を扱うリクルートライフスタイルのアナリストとして、データ分析からサービスシナリオの立案、システムの実装まで幅広く取り組みました。
それでわかったのは、前者のような立ち上げ期型の企業では、ストイックな実働部隊だけでも十分機能するということです。「橋渡し役」が不可欠というわけではありません。私も自分たちを、かっこよく言えば“データ遊撃部隊”、ありていに言えば、“データ便利屋さん”として、効率的な営業をするにはどうすればいいか、もっと集客ペースを上げるには…など現場ごとにチームをつくっては解決して解散、というサイクルが常態化していました。
他方、リクルートのような、巨大で分業分権が進んだ組織に必要なのは、「専門性を持ったプロジェクトマネージャー」と考えられます。業務設計と多部署との接続を行うため、ゼネラリストとスペシャリストを行き来する必要があるのです。同社でもグループマネージャーに、各部署との折衝役となる、「バランサー」が必要でした。
さらに言えば、「データ分析部門」は横断型組織になることが多いと思いますが、大企業ならなおさら、各部門より高い位置に置くのが望ましいと思います。他部門の“下”に配されると、現場ではデータのやりとりに遅延が発生しがちだったり、業務改善が浸透させづらかったりするからです。似たような位置づけが「経営企画」ではないでしょうか。
この状態だと、よほど目覚ましい価値を提供しないと協力を得られなくなってしまうため、実効性が阻害されてしまう傾向が見られます。ある種の“権威”を持たせるとともに、あつれきをなくすバランサーを置くことが、その手のハードルの回避につながると思います。
どんな規模でも、部門を機能させるために共通するのは、繰り返しのようですが「成果物を定義すること」です。部門として立ち上げるとしたら、当期の成果を明瞭にして、それをプロジェクトメンバーの末端まで周知すること。少なくともそれがなければ、各部門からの協力は得にくくなると思います。
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