グローバルからも、アジアからもかけ離れる日本女性の意識
ジェイ・ウォルター・トンプソン(JWT)は、グローバル女性指標 – Women’s Indexプロジェクトの一環として、アジア9カ国を含む世界16カ国で7500人以上の女性を対象とした意識調査を2016年一年間かけて実施、発表した。
調査からは、日本の女性は仕事に対する憧れや平等性、そして希望における意識が他国に比べ大きく引き離されてしまっていることが明らかになったという。
例えば同調査によれば、世界の70%以上の女性達が、今の時代は女性にとってベストな時代であると感じているのに対し、同様に感じている日本の女性はわずか43%に留まっている。また、仕事に対する野心が夫よりも高いと答えた日本女性は、グローバルの 56%に対してわずか半分の 28%。アジアの平均から比べるとさらに低い。アジアでは、タイ女性の 74%、中国女性の 56%、そしてベトナム女性の69%が、配偶者よりも野心があると答えているという。
日本では「優しさ」「母性」、アジアでは「自立性」「自信」「強さ」が“女性らしさ”
日本女性が憧れる女性らしさの価値として「優しさ」と「母性」がトップに挙げられており、逆に他国で高く日本では低いスコアとして挙げられた項目は「情熱、競争力、大胆、野心」だった。これに対し、シンガポール、ベトナム、台湾の女性たちが女性らしさのトップ3として挙げた3つの価値は「自立性」「自信」そして「強さ」だった。
この理由について、「終身雇用と長時間労働を特徴とする日本の企業文化の影響がある。ワーク・ライフバランスの実現の可能性がないこと、育児や介護は女性の役割だという社会認識が強いことが相まっており、日本女性は他のアジア諸国の女性が普通に持つ希望や野心ですら持てないでいる」と同調査では分析している。
同調査ではさらに、仕事と家庭の二者選択を迫られることによる日本女性達の無気力感と葛藤に焦点を当てる。「成功する自信があるか」という質問に対し、日本女性達のスコアはアジアの中で最下位で、さらに日本女性の37%が、「ゴールを達成することはないだろう」と感じており、これは他のアジア諸国の6倍の数字だったという。
ポジティブな女性ロールモデルを登場させることで、ブランドは女性との絆を強められる
また、子供がいる日本女性のほとんどが、家族を高いプライオリティにおいており、仕事がアイデンティティにつながっていない一方で、子供がいない日本女性の36%は子供を持つことを考えていなかった。
「まだ子供がいない日本女性達は、周囲の子供がいる女性達を見て、自立するためには結婚・出産をあきらめなければならないと感じてしまう。そして、子供を産むなら例え経済的に大変だったとしても子育てや家庭を優先した方がよいと葛藤を感じてしまうのでしょう」とジェイ・ウォルター・トンプソン・ジャパンのシニア・ストラテジック・ディレクターの大橋久美子氏はコメントしている。
こうした結果を踏まえて、同調査では、「このような環境だからこそ、ビジネスやブランドは女性資本*を解放していく機会がある。ブランドによる女性の描き方により、社会の女性に対するイメージや、女性達が自らに対して持っている自己イメージにも影響を与えることができる」と述べている。
*女性資本=女性が女性として世の中にもたらす価値。女性を単なる消費者や独身・専業主婦といった既存のターゲット分類で捉えず、富の創出者、発明者、パイオニア、社会活動家、リーダーといった価値視点で捉えていくこと。