オヤジは時代の変化にどう対応したらいい?
山本:今、広告やメディアは何十年と続いてきたスキームが変化してしまうほどの、激動の時代を迎えています。オヤジはその変化にどう向き合えばいいのでしょうか。
日高:仕事の有りようがドラスティックに変りましたね。この数十年で写植屋さんのように、仕事そのものがなくなってしまう状況も生れました。そのうち「カッコいい」と入力すれば、デザインが出てくるような時代が到来するかもしれない。
そんな時代だからこそ、自分の得意分野を精鋭化しなければいけないと思っています。
山本:僕は35歳の時に仲畑さんから「高史はまだバリューが足りない」と言われました。驚いて、すがるような気持ちでどうすればいいのか尋ねると、「考えるフォームや」と言う。尊敬すべきオヤジは、全部を語ってくれません。
僕らの広告という仕事は何一つ同じケースが存在せず、100万ある「例外」に対応することが求められるわけです。ただそれは難しいため、素振りをして基礎体力を養い、フォームをつくって、飛んできた球に応じて少しずつ工夫をしろ、ということなのだと理解しました。
どんな仕事をしている人も自分のフォームをつくるといいと思います。自分のフォームがあれば、どんなに状況が変わっても、鍛え直したり、身をかがめたりしながら、時代に合わせていけます。それが変化に向き合う、正しい態度なのではないかと思います。
三島:プレゼンで偶然、相手の人がうまく納得してくれた時に、なぜそうなったのか繰り返し考えていると、いつかフォームが身につくのでしょうか。
日高:フォームは目指すものではなくて、自然と完成していくものですからね。年を取っていくと、自分の仕事がどんどん先鋭化されてシンプルになっていきます。
山本:そう、自分に何ができて、何ができないのか、冷静に分かるようになる。
日高:コピーは積み重ねた年齢がダイレクトに反映するため、年齢を重ねる方がどんどんいいものが書けるようになるかもしれない。ただデザインはセンスや時代性が求められ、年を取ると表現の感覚がずれていく可能性がある。そこで、どれだけ別の手段で感覚を埋めていけられるのかも考えますね。