行動力を高めるためには何が必要?
DaiGo:房さんや僕は「これでいける!」と思ったら、とりあえずやってみようとするじゃないですか。その最初の「とりあえず」ですら、怖がってできない人がかなり多いのが実情です。では、どうすると勇気が出せるのか。房さんを見て勉強になるのは、相手が「それはちょっと」と拒否しても、全然ものおじしないで、次のチャンスがあるからいいやと執着しないことです。フットワークも軽いですよね。
お気づきの方もいらっしゃるかもしれないけど、僕はオタクです。家が大好きで、行動できない人間だったんです。ある時、どういうことをすれば人間は行動力が上がるのかをネットで調べました、オタクだから(笑)。
僕が実践したものの一つが運動です。運動をすると何歳になっても脳が成長するんです。また、定期的に運動をすると、ネガティブな遺伝子のスイッチをオフにできて、だんだんポジティブになっていくこともわかっています。
もうひとつが、ハーバード大学のエイミー・カディ准教授が提唱する「パワーポーズ」。自分を大きく見せるように、背筋を伸ばして胸を張った良い姿勢を2分間するだけで、人間は勇気が湧いてきて、リスクをとる勇気を持てるようになります。どれくらい効果があるかというと、ギャンブルのようなゲームで実験をすると普通は8%ぐらいしかリスクを取らないのに、パワーポーズを2分間すると33%に上がります。すごく簡単な方法なので、心理戦の時などに勇気を出したい人は運動をしたり、パワーポーズをとったりしてみるといいと思います。
能勢:言われてみれば、DaiGoさんはある日を境に、いきなりライザップに通い出して、ストイックに運動に取り組み始めましたよね。運動するようになった前と後では、脳の働きや考え方が大きく変わるようなことはありましたか?
DaiGo:アイデアを出すスピードがかなり速くなりました。運動をして30分後に本の構成をしたり、ビジネスアイデアを考えたりしているのですが、運動をする前は2週間ぐらいかかっていたことを3時間ぐらいでできるようになりました。すごく不思議ですけど、運動をするようになってからは、面白いこともいろいろと考えられるようになりました。
ウィズというお見合いサービスを行う会社の男性向け広告をつくりました。「あなたの性格を読む」ということで、女性の写真を3枚ずつ見せて、どの女性がタイプなのかを当ててもらうんですけど、実は「女性の写真の間に、ゴリラの写真があったことに気が付きましたか?」というのが最終的なオチなのです。
「女性が求めるのはささいな変化に気づく力だ」というメッセージで、気づけるようになるためのヒントを与えましょう、という広告です。わりと尺の長い広告だったのですが、コンバージョンが通常の広告の10倍になりました。
これは「選択的注意」と言って、人間を特定のポイント、この場合は写真の女性ですが、そこに集中させると他のものが見えなくなる性質を利用したわけです。心理学を利用するといろいろと面白いことができます。
房:そうですね。M&Aで向き合う相手は社長です。せっかちな人が多いので、注意力は2分間ぐらいしかもちません。そこで、30分のミーティングであれば、初めの2分でわかりやすく相手の興味のあることを行う。すると、相手はもっと話を聞きたくなる。その時に、DaiGoの「ゴリラの事例」のような相手を驚かせられるネタがあると、心をわしづかみにできます。
DaiGo:ジョン・ケープルズが著書『ザ・コピーライティング』の中で、「人間の心を惹く言葉には5つの要素がある。新情報・得になること・好奇心をあおる書き方・手軽・信憑性があること」と書いています。こういう要素を、その2分間に入れることができれば、きっとうまくいくのではないでしょうか。
能勢:房さんも、DaiGoさんも、活躍の幅が広くていろんな知識をお持ちです。我々のコミュニケーション・ビジネスに参考になるところがあると思いました。本日はありがとうございました。
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DaiGo
慶応義塾大学理工学部物理情報工学科卒。人の心を作ることに興味を持ち、人工知能記憶材料系マテリアルサイエンスを研究。大学在学中にイギリスのメンタリストDerren Brownに影響を受けて、人間心理を読み、誘導する技術メンタリズムを学び始める。パフォーマーとしてTV出演をしていたが、現在は人間心理の理解を必要とする企業のビジネスアドバイザーや作家・講演家として活動。ビジネスや話術から、恋愛や子育てまで幅広いジャンルで人間心理をテーマにした著書は累計100万部。
房広治
兵庫県出身。早稲田大学理工学部卒。オックスフォード大学に留学中の1984年から1985年、当時オックスフォード市に家族で住んでいたアウンサンスーチーの自宅の最上階の最初の下宿人となる。大学院在学中にイギリスのインベストメントバンクからM&Aアドバイザー部門で就職する機会を得て、ロンドンでの本格的なM&Aアドバイザーの日本人第一号となる。ヨーロッパでのM&Aアドバイザーとして、最高のインベストメントバンク・S.G.ウォーバーグ社の一員として1990年に日本に帰国。2003年にロンドンに再赴任した後、2004年に独立。ミャンマーのバゴー州テゴン地域にて最新式精米所を建設中、12月に完成予定。オックスフォード大学のSpecial Strategic Advisor to the Department of Paediatricsである。
能勢哲司
中国上海市出身。電通で上海万博プロジェクト、自動車メーカー担当営業を経てクリエーティブブティックへ出向。その後、現在の事業開発領域ビジネスに従事。デジタルファブリケーション分野のビジネス開発からスタートアップ企業との協業、異業種とのネットワーキングに注力している。