今回の仕事人
今回たずねた仕事人は…デザイナー:佐藤オオキさん
日本を代表するデザインオフィス nendoを率いる佐藤オオキさん。大学の同級生(であることは、お互い最近知りました)でもあるオオキさんの、強い信念を持って仕事に向き合うその姿と、徹底的に無駄を削ぎ落とした日常を深掘りする中で、非進化論としてのひとつの「解」に近いものが掴めるのではないか。そう考えたんです。2017年一発目の非進化論。満を持して、佐藤オオキさんの登場です。
0と100を繰り返すコピーライティングと、0から100を積み上げるデザイン。
佐藤:潤平さんは、弟子を持たないんですか?
渡辺:いた時もあったんですけど、嫌だったんです。
佐藤:指示を出すのが嫌なんですか? 指示通りにいかないことが嫌なんですか?
渡辺:どっちも嫌です。
佐藤:潤平さんができることって、0から100までありますよね?その中でも、例えば0から10は、お弟子さんにやってもらえますよね? お弟子さんがやっても変わらないことは、お弟子さんにお願いしたらいいじゃないですか。
渡辺:そうですけど…僕が仕事を受けたのに、誰か別の人にコピーを書かせたら、みんな疑問に思いますよね。
佐藤:コピーまで書いたら、0から100ですからね。その前段階はないんですか? 例えば、資料を集めてもらうとかは?
渡辺:それは自分でもできるし、他のスタッフでもできることだから。
佐藤:そうか。多分、業務内容が違うんですね。コピーはいきなり0から100になる仕事ですからね。工程が少ないのかもしれませんね。プロダクトデザインや空間デザインは、時間がかかりますし、とにかく工程がたくさんあるんです。シミュレーションして、模型をつくって、図面ひいて、CG起こして…って、やることが本当に多い。
渡辺:僕の場合は、コピーが書けたら「はい次!」ってなるので、0と100を繰り返す作業なんですよね。
佐藤:超瞬発力ですよね。でも、修正は効かないですよね?「えいっ!」ってクシャミするみたいに、最終的なアウトプットが出ちゃうんですよね?
渡辺:出ちゃいますね(笑)
佐藤:プロダクトだと、僕がまずスケッチを描いて、寸法を伝えて、それからCGや模型が上がってくる。そこで、修正をかけることができるんです。それに、クライアントに渡した後も、何度も修正ポイントがあります。0から100に至るまでステップが結構あるんです。
渡辺:コピーは0から100ですけど、広告の仕事ってありがたいことに、無限にダメ出しされますからね、CD(クリエイティブディレクター)やクライアントさんに。
佐藤:でも、潤平さんは一緒に仕事をしていく中で、ダメ出しされても突っぱねる時ありますよね。
渡辺:確信を持って出したものは、行けるところまでは行くようにしているんです。でも、違うって言われて納得できたら、そこで全部捨てますね。あとは、クライアントから「気になる」と言われたら、相手が納得するまで直します。一回受け止めて考えると、もっと良くなることのほうが圧倒的に多いですから。
佐藤:言葉って最終的なアウトプットですもんね。プロダクトや空間は、模型やCGで見た時は、クライアントは「これで大丈夫かな?」と思って、当然なんです。でも、こちらは最終的なイメージができているので、「そこは心配するところじゃないですよ」とか、「そんな感じにはなりません」と説明をする。その分、クライアントとの対話は多いですね。