学生起業の経験
渡辺:オオキさんは学生時代に、起業されていたんですよね?
佐藤:あれは、たまたまの連鎖なんです。まず、製図ペンを買わされたところから始まるんですけど(笑)。買ったはいいけど使わないので、似顔絵を描くんですよね。その似顔絵を山藤章二さんの似顔絵塾に投稿していて、それを見たフジテレビから連絡があって、『笑っていいとも!』の似顔絵コーナーに出ることになったんです。そのコーナーは、描いた似顔絵を出演者の方に審査してもらうんですけど、グランドチャンピオンになると賞金がもらえるんです。そうやって似顔絵を描きまくっていた時期に、小さな貿易会社で通訳のバイトをしていたんです。でも、その会社が潰れてしまい、僕がその仕事を引き継ぐことになった。そこで似顔絵コーナーの賞金で、有限会社をつくって、自室で貿易を始めたんです。大学1年生の時でした。中国人に日本製の中華包丁を売ったら、すごく切れ味がいいって喜んでもらいました(笑)。
渡辺:すごい!その頃の経験は、今にもつながっているんですか?
佐藤:だんだん新しい商品を提案するのが楽しくなってきて、この人たちは何がほしいのかなって感覚でやっていましたね。似顔絵も同じです。似顔絵って、写真よりその人らしさが大事だったりするじゃないですか? ちゃんと特徴を掴んで、そこを誇張しますよね。後付けかもしれないけど、そういう部分は今の仕事にも役立っている気がします。
渡辺:その後は、人材派遣会社も起業したとか?
佐藤:貿易はそれなりに儲かるんですけど、このまま続けてもやりたいこととは違うと思って、大学3年の時に会社を畳みました。その後、大学院に進学するんですけど、入学してすぐに通信会社で働いている知り合いから「バイト1人紹介して」って声を掛けられた。そこで後輩を紹介したら、「めちゃくちゃ入力が速い!」って、喜ばれたんです。最初は、1人2人と紹介していったんですけど、最終的には法人化して400人以上紹介していましたね。『笑っていいとも!』で知り合った似顔絵師の方もたくさん紹介しましたよ(笑)
貿易や人材派遣は、やればやるだけ売上にはなるんです。でも、それが僕にとって面白いことではないって気づけたのが良かったですね。何十年も続けていくイメージが湧かなかったんです。それで、人材派遣会社も畳むことにしました。
当時の売上はすごく順調だったので、デザインを始めて10年ぐらいはそれを超えられませんでした。でも、お金より面白いことのほうが大事だ、と思える経験を学生時代にできたので…今でもお金への執着は全くないですね。