2017年、メディアをめぐる白熱のポイントを展望する―藤村厚夫氏(スマートニュース)

スマホに代わるUIがメディアをも変える

さて最後に、テクノロジー進化がメディアに及ぼす新しい動向に注意を払っておこう。

その観点から、2017年には「ゼロ・ユーザーインターフェイス(UI)」というコンセプトが広がると、筆者は考える。

ゼロUIとは、UIが従来のキーボード、マウス、指先などを介してコンピュータを操作するような可視的な状態から、不可視な状態へと変化していくことを意味する。機器を操作するインターフェイスに、物理的なものがほぼ介在しなくなるアプローチといえる。

図 4 Aamazonは、外部開発者に向けAlexaへの取り組みを支援するサイトを運営する

たとえば「音声」だ。Amazonがアメリカ、ヨーロッパなどで販売する家庭用スピーカー「Echo」には「Alexa」と呼ばれる音声を用いた入出力機能が搭載されている。

単純な天気予報やニュースの読み上げはもちろん、テレビやステレオ、そして照明などが離れた場所からも操作できるだけでなく、Uberと連動しタクシーの配車を依頼したり、ピザの宅配を注文したりができる。

AmazonはこのAlexaを幅広い民生機器メーカーに供与しており、年明け早々に開催された「コンシューマー・エレクトロニクス・ショー」(CES)では、Amazon以外からも数多くのAlexa搭載製品が出展された。いま自動車搭載システム、冷蔵庫など家電をはじめとするさまざまな製品に音声インターフェイスが備わる一大トレンドが生まれようとしている。

VRやARなど人間の五感に訴える仕組みにも、ゼロUIは不可欠のアプローチだ。

こうなってくると、かつてのキーボード+マウスというUIがスマホの登場で指先UIへと主役の座を譲ったように、今度は音声や視線といったより自然なUIによる機器操作がスマホの存在感を揺るがす可能性が見えてくる。

では、肝心のメディアの姿はそこでどのように変貌していくのだろう?

たとえば、Echoの音声入出力機能は、はじめはEchoに連なる家庭内の各種機器操作に用いられたが、たちまち天気予報、交通渋滞、さらには一般ニュースなどの情報サービスへと応用が広がろうとしている。

AI技術を駆使した高度な会話ボットと連携すれば、「対話型ニュースサービス」が実現するリアリティが高まる。これがメディアに与える影響は小さくない。年末には、多くの人々が自分のお気に入り「ニュースボット」と会話していないとも限らないだろう。

1 2 3
藤村 厚夫(スマートニュース)
藤村 厚夫(スマートニュース)

90年代を、アスキー(当時)で書籍および雑誌編集者、および日本アイ・ビー・エムでコラボレーションソフトウェアのマーケティング責任者として過ごす。

2000年に技術者向けオンラインメディア「@IT」を立ち上げるべく、アットマーク・アイティを創業。2005年に合併を通じてアイティメディアの代表取締役会長として、2000年代をデジタルメディアの経営者として過ごす。

2011年に同社退任以後は、モバイルテクノロジーを軸とするデジタルメディア基盤技術と新たなメディアビジネスのあり方を模索中。2013年より現職にて「SmartNews(スマートニュース)」のメディア事業開発を担当。

藤村 厚夫(スマートニュース)

90年代を、アスキー(当時)で書籍および雑誌編集者、および日本アイ・ビー・エムでコラボレーションソフトウェアのマーケティング責任者として過ごす。

2000年に技術者向けオンラインメディア「@IT」を立ち上げるべく、アットマーク・アイティを創業。2005年に合併を通じてアイティメディアの代表取締役会長として、2000年代をデジタルメディアの経営者として過ごす。

2011年に同社退任以後は、モバイルテクノロジーを軸とするデジタルメディア基盤技術と新たなメディアビジネスのあり方を模索中。2013年より現職にて「SmartNews(スマートニュース)」のメディア事業開発を担当。

この記事の感想を
教えて下さい。
この記事の感想を教えて下さい。

このコラムを読んだ方におススメのコラム

    タイアップ