全国のシティプロモーションの現状とは?福井県坂井市に105の自治体が集結

2016年10月26日から2日間、福井県坂井市を会場に「全国シティプロモーションサミット2016」が開催され、定住促進から地域の活性化まで、様々なテーマの講演やパネルディスカッションが展開された。

メディアを巻き込み地域活性化の起爆剤に

2016年10月26日から 2日間、福井県坂井市で開催された「全国シティプロモーションサミット2016」の様子。約500人を動員した。

2013年に尼崎市(兵庫県)が全国に呼びかけて開催した本イベントは、2014年に相模原市(神奈川県)、2015年に弘前市(青森県)と地域を変えて開催しており、相模原大会では最多となる123の自治体が参加。政府の方針のもと全国で地方版総合戦略の事業が本格的に始まった2016年は、後援の内閣府・総務省・観光庁や大学教授の参加など、地方創生において連携の重要性が問われる“産官学金労言”の各界から協力を得た大会となり、北海道から九州まで105の自治体から約500人が参加した。

26日の基調講演では「うどん県」「ひこにゃん」「今年の漢字」など、数々の地方のPRを成功に導いてきたPRプロデューサーの殿村美樹氏が、「知情意」の「情」に焦点を当てたPRについて説明した。知情意とは、知識を受け取る「知」と感情の「情」、意思の「意」のことで、人間の精神活動の3つの要素を表す。「日本のPRは情報を与えたり体験施設を用意したりするなど、『知意』を起点としがちですが、『情』に訴える情報発信こそ効果的で伝搬に適しています」。

経営者が定めたビジョンをトップダウンで発信する大企業型のPRとは異なり、地域や中小企業は自身が持つ強みや魅力の発掘から始まる。「ブレイクのきっかけをつくるメディアは一方的に活用するのではなく、巻き込みつつ関係性を築くことが地域活性化の起爆剤になるのでは」と語った。

既存の地域資源から町を意識させるためには

同日のパネルディスカッションには尼崎市(兵庫県)や女川町(宮城県)、品川区(東京都)など、5つの自治体の代表者が登壇。既存の地域資源を魅力に変えるために、いかにして市民力を高めるかという議論を繰り広げた。

工場夜景を活かした観光ツアーの賑わいが話題になった尼崎市は、2016年に市制100周年を迎えた。稲村和美市長は「100周年知れば知るほど“あまがすき”♥」というテーマのもと、様々な施策を展開したことを紹介し、「尼崎市は大阪市に隣接し転勤などによる人の出入りが激しい。一方、尼崎でいい体験をした人は、離れた後もいい情報を発信してくれると思う」とコメントした。

続いて、東日本大震災発生後に人口減少が続く女川町の須田善明町長は「どのように賑わいをつくっていくかが課題」と語り、復興の歩みと町の将来像を踏まえたスローガン「あたらしいスタートが世界一生まれる町へ。」を紹介。町民が町づくりに責任を持つ重要性について言及した。

また、品川区は2015年度からシティプロモーション事業を開始し「わ!しながわ」を合言葉に、町を盛り上げる取り組みを実施している。「区民が町に『わ!』となる魅力を発見し自分たちの町を意識することで、町を盛り上げていこうという気持ちになれば」と濱野健区長は語った。

さらに、弘前市(青森県)の山本昇副市長は、弘前デザインウィークの一環で行った一般参加型の弘前城曳屋工事や、大阪府泉佐野市と連携した社会復帰プログラムを紹介。坂井市(福井県)の坂本憲男市長も市民主体の町づくり協議会の話に触れるなど、市区町民自身に思い入れを持たせるシティプロモーションを紹介した。

5つの自治体の代表者が登壇したパネルディスカッション。市民力の高め方についての議論が白熱した。

次回は2017年10月に品川区で開催する予定

2日目には2つのセッションが用意され、「地方創生セッション」では、伊勢志摩サミットで伊勢市情報発信センターの所長を務めたブランド総合研究所の田中章雄社長が講演。「メディアをファンに~伊勢志摩サミットに学ぶ、プレス対応~」をテーマに、国際会議などでのプレス対応を通じた魅力発信の大切さについて語った。ほかにも、品川区が産業と観光、文化を通し、東京を含めた各地域の活性化や町の元気づくりを目指す「特別区連携プロジェクト」の概要を紹介した。

もうひとつの「情報発信セッション」では、2016年の「全国広報コンクール」(日本広報協会主催)で内閣総理大臣賞に輝いた島田市(静岡県)などが広報紙のあり方について語った。

2017年のシティプロモーションサミットは10月に品川区(東京都)で実施される予定。産官学金労言が連携した地方創生の取り組みの加速とともに、活発な意見交換が期待される。

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