日本企業が検討すべきマーケティング戦略「プランB」 — トランプ新大統領、広報コミュニケーションへの影響⑩(結城喜宣氏)

アメリカ国内に工場を持つことを少なくとも一度は検討せざるを得ない状況

いくつかのトランプ大統領の発言から予想できるのは、アメリカ国内に工場を持たず、カナダやメキシコ、中国や日本からの輸入に頼っている製品は高い関税をかけられ、ビジネス環境が厳しくなる可能性があるということです。

これはたまたまですが、私のクライアントのうちのいくつかはトランプ旋風が巻き起こる前に工場をアメリカ国内につくり終えました。それまではカナダやメキシコ、中国や台湾からの輸入に頼っていました。成功するブランドは運も味方するものだなと振り返って思います。

トランプ大統領がトヨタを始め、フォードやGMなどの大手自動車メーカーに現在メキシコで計画している工場建設を白紙に戻すよう圧力をかけましたが、フォードは要望を受け入れ、トヨタはアメリカでの雇用を増やすと表明しています。

私たちのクライアントの工場建設の成功例をみれば、経済の専門家がいうアメリカ国内に工場を移すと製品の価格があがり、結局は消費者が苦しむというロジックは必ずしも全ての製品には当てはまらないのだろうと思います。

しかし、メキシコとの間に壁をつくり、さらに不法移民を追い出すという政策を進めることになれば様相は一変する可能性があります。いまトランプ大統領が槍玉にあげている不法移民1110万人(2014年米国労働省調べ)のうち、26%は農業に従事し、15%は建設現場で働いています。この数字だけみても工場建設コストの高騰は避けられそうにないことが分かります。

もしアメリカ国内に工場を移転せよという要望に従えば、国内で工場ラッシュが起きるでしょう。同時に不法移民を追い出す政策が進んだ場合、建設業界は慢性的な人手不足と人件費高騰に陥り、それはそのままコストを跳ね上げることになります。製造業にとっても生活者にとっても良い話ではありません。

ただその情報だけで悲観的な結論に導くのは、人工知能を代表とする第二次産業革命夜明けと言われる現在にあって、時期尚早かもしれません。環境の変化についていけない者は生き残れない、という動物界の掟に従えば、AmazonやTeslaのように効率と品質の両立を実現する未来型の工場が出てくるかもしれないからです。

これはあくまでも工場建設における素人考えかもしれませんが、そう期待させてくれる新しいテクノロジーの台頭をこの国にいると感じることができます。

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