アートサイエンス、テクノロジー、音楽を超えた新しいクリエイション
「ミュージックフェスティバル チームラボ ジャングル」(以下 チームラボ ジャングル)は、2016年3月に徳島で初めて開催されたミュージックフェスティバルの大阪での開催決定後、そのコンテンツをベースに、100%近くアップデート。主に子どもに向けた50分の「昼フェス」と大人に向けた70分の「夜フェス」で、新たなる体験型アートとして公開された。
「チームラボ ジャングル」は通常の音楽フェスティバルとは異なる。縦横無尽に動くムービングライトが空間に生み出すのは、光の線による彫刻やオーロラ。参加者が光に触れると音が鳴り、そこから新たな音楽が奏でられていく。光のボールが会場内を飛び交い、ミラーボールの御神輿が登場するなど、空間の中で次々と展開されていく。
そして他の音楽フェスティバルと決定的に違うのは、アーティストやミュージシャンは登場せず、参加した一人ひとりが主役であること。それぞれが音を奏でる人、空間をつくる人となり、自ら参加することで、この空間を体感できる。
「最初に考えたことは、光の線の集合による、空間の再構成、立体物の構築でした」と話すのは、チームラボ代表・猪子寿之さん。「空間や立体物は、線の集合がデジタルで制御されることによって、インタラクティブに動く。空間や立体物は光でできているため、参加者は身体ごとその中に没入していく――そういう体験をつくりたいと思いました。僕らにとっては、これもアート。通常の展覧会では並んだ作品を人が移動しながら見るけれど、これは音楽という時間軸に沿って、作品が入れ替わっていく。極端なことを言えば、踊っているような状態でアートを身体で知覚してもらう、新しい形の展覧会と言えるかもしれません」。
開催にあたり、2017年4月に日本初の「アートサイエンス学科」を新設する大阪芸術大学が、アートサイエンスの学びを具体化する場所としてチームラボ ジャングルに協賛。期間中、同大学在校生70名が演出サポート、運営スタッフなどで参加した。開催前、春から同学科客員教授を務める猪子さんはアートサイエンスの可能性と現場での体験の重要性を話し、学生たちにエールを送った。
国を超え、言葉を超え、子どもから大人までが楽しめる、チームラボの作品のベースには一体何があるのか。
「どんな作品をつくるときも、僕らが一番関心を持っているのは人間そのもの。人間は太古の昔から知らない体験によって脳を拡張したいと思い続けてきたはず。僕らの作品を通して、人間が本来持っている身体的知をバージョンアップしていくようなことができたら、と考えています」。
アート、サイエンス、音楽、テクノロジーを超えた、これまでにないクリエイション―――。その萌芽が、このチームラボジャングルに現れている。
編集協力/大阪芸術大学