※本記事は、『宣伝会議』2017年3月号とアドタイとの共同企画「アドタイコラムニストはこう見る!2017年 広告界動向予測」の一部を掲載したものです。その他の記事は本誌をご覧ください。
境 治(さかい・おさむ)氏
コピーライター/メディアコンサルタント
1962年福岡市生まれ。1987年東京大学卒業後、広告会社I&S(現I&SBBDO)に入社しコピーライターに。その後、フリーランスとして活動したあとロボット、ビデオプロモーションに勤務。2013年から再びフリーランスに。有料WEBマガジン「テレビとネットの横断業界誌 Media Borer」を 発刊し、テレビとネットの最新情報を配信している 。エム・データ顧問研究員としても活動中。
境氏のコラム「ビデオコミュニケーションの21世紀〜テレビとネットは交錯せよ!〜」はこちら
2016年は、テレビがネットの話題を追いかけてブーストさせる現象が相次いだ。
典型的なのは「文春砲」のスクープが次々と話題になり、それをテレビが増幅してさらにネットが沸騰したことだ。あるいはドラマ『逃げ恥』で、ネット上で「恋ダンス」が話題になり視聴率も上がっていったことも同様だ。
テレビにとってネットを味方につけ利用することで、ブームづくりや視聴率に影響を及ぼすことが可能になってきた。少し前までの「ネットはマスを動かせない」と言われていた状況から、時代がひとつ進んだのだ。今年はこの傾向にさらに拍車がかかり、テレビとネットの相乗効果から生まれるヒットが相次ぎそうだ。
一方テレビ各局の視聴率は“微減”を続け、厳しい状況となるだろう。だが広告メディアとしては、新聞雑誌の凋落が激しい分、唯一のマスメディアとしてニーズが落ちないだろう。ただ広告主側も、さまざまな外部データを駆使して最も効率的な出稿パターンを模索することになる。今までとは違うCMの使い方が出てくるはずだ。
テレビ界での議論は、同時配信にどう向き合うかが急激にホットになるだろう。NHKが単独で実験に取り組んできたが、民放側がどう対処するかも問われそうだ。局によって立場が分かれるだろう。ただ見逃し配信も含めて、著作権についても う一度議論が起こるだろう。権利者側にも、これまでより一歩進んだ姿勢が出てくる気がする。
タイムシフト視聴率が一般にも知られるようになり、特にドラマでは多くの人が気にする数字になる。これと見逃し配信をテレビ局がどうビジネスにしていく か、いよいよ問われることになりそうだ。
2016年はあまり表立って話題にならなかったSVOD(Subscription Video on Demand)サービスがあらためて浮上しそうだ。各サービスのオリジナルコ ンテンツがユーザーをつかみ、利用が一般的になるだろう。特にAmazonプラ イムビデオは、ある意味“使っていて当たり前”のサービスになると思う。スマートフォンだけでなくテレビ受像機メインでの利用も一段と普及しそうだ。
映像メディアについて総じて言えるのは、「元年」の終了だと思う。SVOD、見逃し配信、ライブ配信、動画広告、それぞれが何度も「元年」と呼ばれてきたが、もう打ち止め。
今年からはすべてが「2年目、3年目」に突入していくのだと 思う。それはもはや「お試し」の許されない、現実と向き合う厳しい時代の始まりかもしれない。実際に、結果が出てくる2017年になってほしいものだ。
本記事は、『宣伝会議』2017年3月号とアドタイとの共同企画「アドタイコラムニストはこう見る!2017年 広告界動向予測」の一部を掲載したものです。その他の記事は本誌をご覧ください。