満足度を向上させることで参加者自身をメディアに
日本レコード協会の調べでは、2016年のCD市場は数量ベースで前年比95%と、減少傾向が続いている。ミュージシャンらとしてはプロモーションに力を注ぎたいところだが、「もともとアーティストは過密スケジュールでレコーディングやライブを行うので、本人がプロモーションに積極的に参加するのは難しい」と、三浦氏は音楽業界特有の背景を語る。
ミュージシャン本人らを招ければ、ファンに対してはこれ以上ない求心力となる。しかし、なんとか本人たちがいなくても、魅力的な体験を提供できる手段はないのか。三浦氏はじめ企画チームでは、それが今回のイベントの企画の発端となった。ライブやデジタル配信以外の音楽を体感できる方法、「着る試聴会」はそうした経緯で企画された。
話題の拡散も踏まえると、体験者になにより感じてほしい、コメントしてほしい声は「やっぱりワンオクはいい!」というもの。そこで、ターゲットは既存のファンをメインとすることに。「全く新たなファンを獲得することを目的にするよりも、既存のファンをターゲットにしたほうが、イベントの満足度を高められるはず。
ワンオクのファンの熱量は物凄いんです。彼・彼女らを感動させること、それがワンオクというアーティスト、そして音楽の持つ力を最大限活かし、広く世の中に伝えていく起爆剤になると考えました」。
イベントの目標は、参加者に音楽の新体験を味わってもらい、感動させること。「仮に、倍の600人が体験したとしても、その体験に満足しなければ、話題の広まりは期待できません。参加者自身に“メディア”になってもらい、体感したことをソーシャルメディアで発信してもらうには、第一に満足度が重要です」。
メディアアーティストとしてジャケットの開発に協力した落合氏も、本番の2分前まで念入りにジャケットの微調整を続けた。湿度や部屋の広さなどにより音響が微妙に変わってくるためだ。「こうしたディテールへの配慮も、参加者の記憶に残るような体験を提供するためには不可欠でした」。
この記事は本誌掲載のものを抜粋再構成したものです。全文は【『販促会議』2017年3月号】をご覧ください。本誌では、以下の内容についても掲載しています。
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三浦崇宏氏(みうら・たかひろ)
GO 代表取締役
博報堂、TBWA\HAKUHODOを経て2017年に独立。2016年カンヌライオンズクリエイティブフェスティバルゴールド(ヘルスケアPR部門)グッドデザイン賞金賞 他多数受賞。