goo辞書の小学館提供の『デジタル大辞泉』の解説を見てみると下記のように解説されていました。
マーケティングや広告の教科書によく出てくるのは、「消費者」(コンシューマー/consumer)という単語です。これは、馴染みのある単語です。しかし、この言葉の欠点は、私たち人間を「商品やサービスを消費する存在」としてのみ捉えている点です。
「消費者」は、私たちのある一面を捉えていますが、私たちのすべてではありません。私たちはモノやサービスを消費するだけでなく、音楽を聴いたり、人と話をしたり、映画を見たり、怒ったり、悲しい気持ちになったり、ペットと遊んだりする人間であり、実際に生きて暮らしている存在です。
そうした私たち人間の全体を捉えようという視点から、いつしか広告業界では、「生活者」という言い方が一般的になってきました。つまり、「今回の商品を生活者にどうアプローチするかが課題だ」とか、「今の生活者に届けるためには、もっとこうしなければいけない」などと言った使われ方です。
最近では「ユーザー」という言葉も一般的になりました。これはインターネットが普及してから急激に使われ始めた印象があります。これは「利用している」という意味に使われる場合が多いようです。つまり、世の中の商品やサービスのあり方が拡張して、実際に購入して消費するだけではなくなったという状況が背景にあると考えられます。
最後に「顧客」です。顧客とは実際に購入している人たちです。つまり「消費者」が、該当商品やサービスをまだ購入していない広く世の中の人一般を指すのに対して、「顧客」はすでに購入して使っている人たちを指す言葉です。『デジタル大辞泉』によると、さらに一歩進めて「ひいきにしてくれる客。得意客。」と解説されています。
この、ひいき客、あるいはお得意さまとは、言い替えれば「ファン」です。つまり、マス広告ができるだけ多くの「消費者」、あるいは「生活者」にアプローチして、できるだけ多くの「新規顧客」を獲得しようとするのに対して、アンバサダープログラムでは、実際に買ってくれているお客さま、つまり「顧客」=「ファン」を重視するのです。これは新規顧客の獲得を軽視しているわけではありません。「既存顧客」を通じて「新規顧客」にアプローチする方法でもあるのです。
『顧客視点の企業戦略-アンバサダープログラム的思考-』は、既存顧客を重視するアプローチに関する本です。これはいわば今までのマス・マーケティングとは真逆の考え方であり、今の時代に求められている、マス・マーケティングと対を成す考え方の指南書でありガイドなのです。
さて、あなたは普段、マーケティングや広告の仕事をするうえで、「顧客」に近しい言葉をどれだけ使っているでしょうか。
本書は、顧客視点のマーケティングを実現したアンバサダープログラムの考え方を軸に、マス・マーケティングと両輪で機能させる、もう一つのマーケティング、真の顧客視点戦略についてまとめた書籍です。
はじめに:「新たなる現実」を受け入れて、次へ向かう指標としての顧客視点/第1章:顧客視点がないと「マーケティング」ではない/第2章:マーケティングを顧客視点で組み替える/第3章:企業の目的は「顧客を創造する顧客」の創造である/第4章:顧客と一緒にマーケティングする/実践レポート:アンバサダーの体験設計(上田 怜史)/第5章:アンバサダーが企業にもたらす変化/第6章:顧客視点経営がビジネスを変える