「エンゲージメント」はメディアの価値を支えられるか?2016年の大転換から見直す

読者との関係の深まりを表わす

では、どうすれば「エンゲージメント」を指標化することができるだろうか?

メディアではなく、むしろマーケティングの考えに学ぶことがありそうだ。ジム・スターン著『実践ソーシャル・メディア・マーケティング』は、エンゲージメントが深まるプロセスを9段階に区分して説明する。

  1. 推薦する
  2. 購買する
  3. 交流する
  4. クリックする
  5. コメント投稿する
  6. 転送する
  7. 評価する
  8. 保存する
  9. 見る

上記は商品を橫目に見て、通り過ぎるに等しかった消費者が、それを購買し、知人らに推薦する「製品布教者のレベル」に至る段階を示している。上から最もエンゲージしている状態と理解する。

もちろん、これは製品やサービスを選択し、購買する消費者にとってのエンゲージメントを指しているわけだが、メディアについても基本的に当てはまると見ていいだろう。

ところで昨今、エンゲージメントの意義が強調され、その指標化への期待が高まっているのは、「ソーシャルメディア」の影響力の高まりが背景にある。

TwitterやFacebookなどのソーシャルメディアでは、上記の「見る」から「推薦する」までの各段階に相当するアクション(リアクション)が機能化されている。ニュース記事などの投稿に付加される「いいね!」「シェア(リツィート)」「コメントする」などのリアクションがそれだ。

いまではニュース記事などを発信するメディアはもちろん、ECをはじめさまざまなネット上のサービスが等しく、Facebookなどのソーシャルメディアを介したユーザー(読者)接点を重視している。結果として、これらソーシャルメディアが各々の提供する「エンゲージメント」を指標として重要視する流れとなっているわけだ。

たとえばFacebookにおいて、その記事やメディア(のFacebookページ)のエンゲージメント値は「いいね!」、「コメントする」、「シェア」の総和で測る。これをリーチしているユーザー数で割れば、エンゲージメント率が求められる。

図2 Facebookの管理画面「インサイト」。エンゲージメントが確認できる

次ページ 「「エンゲージメント」が欠落させるものとは」へ続く

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藤村 厚夫(スマートニュース)
藤村 厚夫(スマートニュース)

90年代を、アスキー(当時)で書籍および雑誌編集者、および日本アイ・ビー・エムでコラボレーションソフトウェアのマーケティング責任者として過ごす。

2000年に技術者向けオンラインメディア「@IT」を立ち上げるべく、アットマーク・アイティを創業。2005年に合併を通じてアイティメディアの代表取締役会長として、2000年代をデジタルメディアの経営者として過ごす。

2011年に同社退任以後は、モバイルテクノロジーを軸とするデジタルメディア基盤技術と新たなメディアビジネスのあり方を模索中。2013年より現職にて「SmartNews(スマートニュース)」のメディア事業開発を担当。

藤村 厚夫(スマートニュース)

90年代を、アスキー(当時)で書籍および雑誌編集者、および日本アイ・ビー・エムでコラボレーションソフトウェアのマーケティング責任者として過ごす。

2000年に技術者向けオンラインメディア「@IT」を立ち上げるべく、アットマーク・アイティを創業。2005年に合併を通じてアイティメディアの代表取締役会長として、2000年代をデジタルメディアの経営者として過ごす。

2011年に同社退任以後は、モバイルテクノロジーを軸とするデジタルメディア基盤技術と新たなメディアビジネスのあり方を模索中。2013年より現職にて「SmartNews(スマートニュース)」のメディア事業開発を担当。

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