過去にはクレームから商品が発売中止になったことも
ここで今後、企業が見極めなければいけないのは、はたしてその批判が本当の顧客の声なのか、単なるクレーマーや野次馬なのか、どちらの意見が本当の自分たちの顧客の声なのか、という点でしょう。
例えば2014年に、ファミリーマートが発売を予定していた「フォアグラ弁当」への批判を受けて、発売を中止したことが大きな物議を醸したことがあります。
参考:「フォアグラ弁当」発売中止の背景は? アメリカでは生産禁止の州も
最初に注目されたのが、抗議の件数が22件だったという説。この件数は公式発表ではないようですが、全国に展開するコンビニチェーンが22件の抗議で、発売を中止するというのはどうなのかという点で注目されました。
さらにその後に注目されたのが、この抗議の中心にいたのがNPO法人アニマルライツセンターという保護団体だったことです。この騒動は、食文化や批判に対する企業の姿勢など、さまざまなテーマの議論に飛び火しました。
フォアグラという食文化が是か非かは、このコラムでは議論しませんが、少なくともファミリーマートが保護団体からの批判に屈して、フォアグラ弁当の発売を中止したという行為自体が、一方のフォアグラ容認派の人々からすると弱腰と受け止められて逆に批判を受ける結果にもなった、というのが注目すべきポイントです。
発売すればフォアグラ否定派から批判をされ、発売を中止すればフォアグラ容認派から批判をされる構造なわけで、企業にとってはどちらが自分の顧客の声なのか、という判断が非常に重要になっている時代であると言えるでしょう。
もちろん、顧客からのクレームを全て最初から悪意のあるクレーマーであると決めつけることも間違っています。
2015年に発生した、まるか食品のペヤングの異物混入騒動においては、当初まるか食品側が異物混入の可能性を否定したことが、騒動の拡大に結果的に寄与してしまいました。
まるか食品側が当初、写真の投稿者の行為をどう受け止めていたのかは想像の域を出ませんが、異物混入の写真をツイッターに投稿したという行為に悪意の可能性を感じてしまったために、初期対応が対立構造になってしまった印象が強くあるわけです。
ただ実は、問題の写真の投稿者はもともと大のペヤング好きであり、ペヤングを日々食べているからこそ、たまたま異物混入の商品に遭遇してしまい、あまりの出来事に困惑してツイッターに写真をあげてしまったらしい、ということが分かっています。
もし、まるか食品側が最初からその事実に気がついていれば、最初から丁寧な対応を行うことで、ここまでの騒動にならなかった可能性が高いわけです。