堀田有香
アジアクリック インドネシア担当
2014年よりインドネシア人との結婚を機にインドネシア・ジャカルタ在住。旅行好きで、これまでに30カ国以上を訪れ海外生活4カ国13年目突入。アジアクリックでは、ASEANと東アジア各国の現地特派員と共に日本とアジアの現地消費者が 。「知り合う・繋がり合う・うまくいく」コミュニケーション方法を主にSNSを通じて提供している。
フィリピンではバレンタインの1週間ほど前から、ある動画が話題を集めた。その動画とはフィリピンで人気の国民的ファストフード店Jollibeeが仕掛けた動画広告だ。
Jollibeeではバレンタイン当日に向け、YouTubeでこの動画を公開し、Facebookでも投稿。2月20日現在、シリーズ合計で約400万回、再生されている。動画をシェアし、コメントを寄せていた。フィリピン人を夢中にさせたコマーシャルビデオの3つのシリーズをそれぞれ見てみよう。
シリーズ1のタイトルは「VOW(結婚の誓い)」。Jollibeeで出会った男女の恋愛ストーリーが、主人公の男性目線で描かれている。しかし、最終的に女性は別の男性と結婚。2人は友達関係になってしまう。最後のキャッチフレーズは、For those who continue to love without condition.(無条件の愛を与え続ける人へ)
シリーズ2は、「CRUSH(一目ぼれ)」。学生時代にある女性に一目ぼれした男性。彼は、失敗して落ち込んでいる女性を励まし、彼女に振り向いてもらうためにメッセージを添えたハンバーガーを渡し続ける。時は流れ2人は結婚し、孫を持つシニアとなる。そして、同窓会の幹事として頑張る妻に対して夫からハンバーガーを渡すラストシーンで For those who didn’t give up on love.(恋を諦めなかったあなたへ)というキャッチフレーズが表示される。
シリーズ3は「DATE(デート)」。小学生の男子がバレンタインにJollibeeで母親と過ごす設定。父親は病気で他界しているが、生前残したメッセージ動画を見せ、精一杯、母親を喜ばせようとする様子が描かれている。そして、結びの言葉として、For the love that never ends (終わりのない愛へ)と綴られている。
全ての動画の最後にはcelebrate the joy of love(愛する喜びを祝いましょう)というタグラインがあり、Jollibeeは人々の生活の一部であるというメッセージが伝わってくる。
国民の80%以上がカトリック教徒と言われているフィリピンでは、バレンタインは大きなイベントの一つである。このキャンペーンにおいては、バレンタインは恋人同士の一時的な愛だけではなく、もっと大きな人間愛について描かれている。
さらに、実話に基づいた感動的でハートウォーミングなストーリーであることも相まって、バレンタイン前の週末には動画を見てJollibeeを家族で食べたという投稿が相次ぎ、Facebookを始めとしたフィリピンのSNSが賑わっていた。国民的ファストフード店が提供する温かさを伝える動画の作りがフィリピンの生活者の心を掴んだと言えそうだ。