ネット広告はもう一度「広告」にならないといけない(これ、だいじな話!)

YouTubeが推奨するHHH戦略を応用する

まずファネルの話です。これも12月の記事で「ネイティブ広告ハンドブック」を参考に書いたことです。認知から購買に至る流れにいま穴が開いているのです。ハンドブックの言う“ミッシングリンク”。繋がっていないんです。

これはざっくりした整理ですが、一昔前はテレビCMで認知を図り、新聞・雑誌広告で興味関心を喚起していました。場合によっては具体的な検討もしてもらって、あとは店頭で購入してもらう、という流れ。いや、比較検討から店頭だよとか、新聞・雑誌だって認知として機能してたよとか、いろいろ異論各論もありましょうが、ざっくり整理するとそんな感じ。

今は右側です。テレビは相変わらず最強の認知力。ネットはコンバージョンですとか何とか言って、具体的な購入に誘導しろという場。あれ?その間が抜けてるね、というのがネイティブ広告ハンドブックの指摘でした。その通りですよね?

ところでGoogleが唱えるHHH戦略って知ってますか?それこそググれば、いくらでも解説が出てくる。動画は役割分担させて使いましょう、という考え方です。HERO動画は広く認知を図る。HUB動画は人びとと関係を結ぶ。HELP動画は欲しい情報を提供する。だいたいそんな説明をするようです。そしてこれはまさに、ファネルなんですね。だからファネルの「認知=HERO動画」「興味関心=HUB動画」「比較検討=HELP動画」という整理ができるわけですね。

そうすると、なんかここ数年の“ウェブムービーでバズらせてよね”という話が、いかに不完全なコミュニケーションだったかがわかる。ナンチャラ女子高生とかいう動画が話題になりましたけど、ああいうのだけやっても意味なかったんじゃね?そう言いたくなる。

実際、「バズらせてと言われてバズらずに終わったムービー」がYouTubeのあちこちに屍(しかばね)となって転がっています。一度、屍になると二度と浮上することはない。そういうの、もうやめましょう。そういう依頼が来たら、「HUBやHELPはどうします?」とか、わかったようなこと言って、制作費を膨らませればいい。

話が逸れました。このHEROだHUBだという役割は、何も動画じゃなくてもいいわけです。いいはずでしょ?テキストと画像で構成した“記事”のような形式でもいい。認知を獲得できればいい。興味関心を引ければいい。
つまりね、こんなイメージです。

わかります?そしてこの構造を具体的にイメージすると、HUBが意外に重要なんですね。HEROはね、テレビCMに任せたっていいんですよ。でもHUBコンテンツは地道に届け続けることで、“知ってるだけ”のブランドを“ちょっといいかも”と思ってもらえる。

そして、HUBだのHELPだのが動画じゃなくて記事でもいいとなると、昔の新聞・雑誌広告ってそんな存在だったんでね?と思い至る。だって昔は新聞・雑誌広告が担ってた部分ですからね、当たり前ですよね。つまり昔の新聞・雑誌広告でやってたシリーズ広告みたいなことを、ネットでやることなんですよ!

そしてこのコンテンツを配信する仕組みの重要なパートが、ネイティブ広告だったりするわけです。

次ページ 「友人の依頼を受けて実際にやってみた」へ続く

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境 治(コピーライター/メディアコンサルタント)
境 治(コピーライター/メディアコンサルタント)

1962年福岡市生まれ。1987年東京大学卒業後、広告会社I&S(現I&SBBDO)に入社しコピーライターに。その後、フリーランスとして活動したあとロボット、ビデオプロモーションに勤務。2013年から再びフリーランスに。有料WEBマガジン「テレビとネットの横断業界誌 Media Border」を発刊し、テレビとネットの最新情報を配信している。著書『拡張するテレビ ― 広告と動画とコンテンツビジネスの未来―』 株式会社エム・データ顧問研究員。

境 治(コピーライター/メディアコンサルタント)

1962年福岡市生まれ。1987年東京大学卒業後、広告会社I&S(現I&SBBDO)に入社しコピーライターに。その後、フリーランスとして活動したあとロボット、ビデオプロモーションに勤務。2013年から再びフリーランスに。有料WEBマガジン「テレビとネットの横断業界誌 Media Border」を発刊し、テレビとネットの最新情報を配信している。著書『拡張するテレビ ― 広告と動画とコンテンツビジネスの未来―』 株式会社エム・データ顧問研究員。

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