お客さまがメディアになる時代 — マクドナルド、西友、DEAN & DELUCAが考える思わず発信したくなる体験とは?

社会ゴトと身内ゴト、発売前の露出量が売上を左右する

今回は食に関わる3社のマーケターが集ったことから、JAPAN CMO CLUBの加藤希尊氏より「食に関わる消費者のパーセプション」というテーマについて、問いかけがあった。

全国区の知名度を獲得しているブランドだからこそ、過去のイメージでパーセプションも固定化されがち。そこをどう時代に合わせて変革させていくべきか、というのが加藤氏の質問の狙いだ。

この問いに対して足立氏は「ファーストフードのイメージが定着していることは課題。例えば、『ビッグマック』であっても1個当たりのカロリーは約540キロカロリーで、サラダと無糖の飲料を組み合わせれば脂質やたんぱく質も摂取でき、太る食事ではないと考えている。事実を持ってロジカルに説明すれば理解をしてもらえることでも、『ハンバーガーは太りそう』という固定化したイメージがあると、消費者のパーセプションを変える努力が必要となる」と話した。そこで同社では、従来の広告にとらわれないメディア向けのコンテンツ発信に力を入れているという。

その取り組みの一つが、お客さま自身が発信したくなる先述の施策だ。「ハンバーガーが主力商品である業態特性上、どんなに商品開発を頑張っても、常に尖ったモノをつくり続けるのは難しい。そこで重視しているのが、少しでも日本マクドナルドの商品を社会ゴト化、そして身内ゴト化してもらうための施策だ。今も、テレビCMは使っているが、ただマス広告を主軸にした、これまでのマス・マーケティングからは大きく方向転換をしている。特に社会ゴト化、身内ゴト化の取り組みに注力するのが新商品発売前のタイミング。発売前の口コミでの話題化、メディアでのパブリシティ露出には2016年後半くらいから、注力しているが、発売前の露出量は販売期間の売上げに比例するという手ごたえを感じている」と足立氏は説明する。

 

また木村氏からは「その商品が美味しいかどうかわからない状況で食べるのと、美味しいはずだと思って食べるのでは同じ商品でも感じ方が変わるのでは。ポジティブなパーセプションをつくりあげるのは重要だと思う」と意見が出た。

例えば西友のプライベートブランド「みなさまのお墨付き」では、対象消費者の7割以上がブラインドテストの結果、支持した商品のみ、製造・販売をしてきた。この取り組みを続けていく中で、商品ラインナップが新規に加わっても、「西友のプライベートブランドなら美味しいはず」と思って手に取ってもらえる機会が増えるのではないか、と期待をしているという。

研究会では恒例の企画として、参加各社のブランドを体験できる商品などを持ち寄ってもらい、それぞれのブランドに対する理解を深めている。

ブランド軸と顧客視点の両方が大切

研究会を終えて加藤氏は「今回は顧客がブランドに求めていものが全く異なる3社が集まった。マクドナルドであれば、『香りも想像できて、たまにどうしても食べたくなる食事』。『DEAN & DELUCA』であれば『自分へのご褒美』など。まったく違うスコープでマーケットと向き合っている3名だけに、同じテーブルを囲んだディスカッションはいつも以上に刺激的な場になった」とコメント。

さらに「情報発信の主役が企業から完全に消費者に移行した現在、企業目線の一方的な発信では消費者に振り向いてもらえない。それでは、どうしたら自分たちのブランドの理念やこだわりに興味を持ってもらえるのか?ディスカッションの中ではSNSの活用、さらにSNSで思わず発信したくなるようなリアル店舗だからこそできる体験づくりの工夫も見えてきた」と続けた。

広告だけに留まらない、SNSやスマートフォンなどを駆使した、企業と消費者をつなぐ、コミュニケーションシナリオの全体設計がマーケターに求められている状況が見えてくる研究会となった。

 

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JAPAN CMO CLUB
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