広告・マーケティング業界で使われている言葉が「戦争用語」だと知っていましたか?

広告・マーケティング用語の本来の意味は?

goo辞書の小学館提供の『デジタル大辞泉』の解説を見てみると、下記のように解説されていました。

広告業界では日常的によく使う言葉です。

「今度のターゲットは30代の独身男性だよね」
「もっとインパクトのある表現で勝負しよう!」
「春のキャンペーンでの注力ポイントは…」
「まずはストラテジーを固めよう」
「広告効果を高める3つのタクティクスについてご説明します」

こうした用語は、全て戦争用語だったのです。そのまま和訳すると以下のようになります。

「今度の“攻撃目標”は、30代の独身男性だよね」
「もっと“衝撃”のある表現で勝負しよう!」
「春の“軍事行動”での注力ポイントは…」
「まずは“戦略”を固めよう」
「広告効果を高める3つの“戦術”についてご説明します」

私たちが“標的”だという衝撃

何と怖いことでしょう。企業や広告会社が企画した広告戦略が、地域や季節ごとに日常を席巻し、コピーの爆弾がメディアを通じて炸裂しているわけです。しかし、考えてみれば市場は自由競争の場です。私たちの目の前で、企業同士が戦いを繰り広げ、勢力争いをしているのは当たり前の風景なのです。私たちは戦場に生きているというわけです。

市場占有率という言葉もあります。これは市場シェアのことですが、企業同士が“いかに領土を獲得して勢力を拡大していくか”といったイメージが似合う言葉です。

しかし、よく考えると、この比喩でいう“領土”とは「私たち」のことなのです。つまり私たちは戦場に生きているどころか、“消費者”という存在は企業にとっては攻略していく相手、つまり標的(ターゲット)だというわけです。

何も英語を引き合いに出すまでもなく、実は日本語でも戦争用語が頻繁に使われています。マス広告のことを「空中戦」、店頭周りのセールスプロモーションを指して「地上戦」という言い方もあります。こうした用語に広告業界の多くの人は慣れてしまっていると思いますが、改めて考えてみると物騒な表現です。

競合商品がひしめく分野のことを「激戦区」と呼んだり、強者に勝つための戦略として範囲を限定して戦うことを「局地戦で勝とう!」などと呼んだり、広告会社の営業部を指して「営業部隊」と呼ぶ習慣だったり…。冷静にあたりを見渡すと、広告やマーケティング業界は戦争用語のオンパレードだと気づくはずです。

ちなみにWeb時代を迎えて「ターゲティング広告」などという手法がありますが、これは文字通り、私たちという“標的”を自動追尾して追いかけてくるミサイルのような広告だというわけです。

次ページ 「顧客は攻略すべき相手ではない」へ続く

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藤崎実(東京工科大学メディア学部専任講師/アジャイルメディア・ネットワーク エバンジェリスト)
藤崎実(東京工科大学メディア学部専任講師/アジャイルメディア・ネットワーク エバンジェリスト)

博報堂 宗形チーム、大広インテレクト、読売広告社、TBWA HAKUHODO、アジャイルメディア・ネットワークを経て、現職。
変わりゆく広告の最前線を歩み、ファンやアンバサダーに着目した企業のマーケティング活動に従事し、研究職に。
日本広告学会:クリエーティブ委員、産業界評議員、デジタルシフト準備委員会。日本広報学会会員。WOMマーケティング協議会:副理事長、事例共有委員会。東京コピーライターズクラブ会員。カンヌ・クリエイターオブザイヤー他受賞多数。多摩美術大学、日大商学部非常勤講師。

藤崎実(東京工科大学メディア学部専任講師/アジャイルメディア・ネットワーク エバンジェリスト)

博報堂 宗形チーム、大広インテレクト、読売広告社、TBWA HAKUHODO、アジャイルメディア・ネットワークを経て、現職。
変わりゆく広告の最前線を歩み、ファンやアンバサダーに着目した企業のマーケティング活動に従事し、研究職に。
日本広告学会:クリエーティブ委員、産業界評議員、デジタルシフト準備委員会。日本広報学会会員。WOMマーケティング協議会:副理事長、事例共有委員会。東京コピーライターズクラブ会員。カンヌ・クリエイターオブザイヤー他受賞多数。多摩美術大学、日大商学部非常勤講師。

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