PRパーソンがカンヌに挑戦する意味
—PRパーソンにとって、カンヌに行ったり、ヤングカンヌに挑戦する意義は何だと思いますか?
2009年に、カンヌ本戦にPR部門ができたというストレートな意味はありますが、それだけではないと思います。PR視点というのは、インターネットと同じくらい、部門をまたいだ共通した概念になってきていると感じます。人やメディアのリアクションを想像してキャンペーンを組み立てることが、当たり前になってきているからです。
言い換えれば、PRパーソンにとって、カンヌの全部門が主戦場になるということだと思います。狭義のPRというか、メディアプロモートという専門性をいったん置いて考えれば、そのキャンペーンのコアアイデアがPR的、つまり広がりを見せるようなアイデアであることは、今や必須。
そういう意味で言うと、PRパーソンにとっては、カンヌの全部門が学びの対象だし、チャンスです。チタニウム部門のインテグレーテッドキャンペーンのグランプリを、PRパーソンが獲ることだって、十分あり得ると思います。ヤングカンヌはその入り口、つまり世界と戦う入り口に立つ素晴らしい機会だと思います。
世界で渡り合うための、3つの「ty」
—世界と同等に競い合うには、どういう視点が必要なのでしょうか。
世界で評価されるには、3つの要素が必要だと思っています。それは、Simplicity, Creativity, Socialityです。
まず、Simplicityはアイデアのシンプルさ。複雑なアイデアは伝わりづらいです。一言でアイデアを説明してもわかってもらえる、それが大切です。
そしてCreativity。PR部門におけるCreativityって何だろうと疑問に思っている人もいるかもしれませんが、これには、「アウトプットのCreativity」と「事実発見のCreativity」があると考えます。2016年のカンヌ本戦のPR部門でゴールドを受賞した「Bees Can Find Sugar Where You Least Suspect It」は、加工食品から蜂が蜜をつくり、砂糖の量を可視化するという驚き。つまり「アウトプットのCreativity」がありました。
グランプリだった「The Organic Effect」には、2週間、食事を有機食品だけに替えると体の中から農薬が消えるという事実を見つけ出した、「事実発見のCreativity」があったと思います。Creativityは、何もアウトプットだけに限られたことではないと感じました。
最後のSocialityは二つの意味があります。一つは社会性。社会にどう寄与したか、どう社会を変えたのか、という視点はPRには欠かせないですね。もう一つは、ソーシャルメディアという意味です。「このメディアには、こういう切り口で載りそうだ」という感覚を世界共通で持つことは難しいですが、ソーシャルメディアで広がりそうだ、という感覚は共通認識になる気がしますよね。
メディアでのパブリシティを引き出すか、ソーシャルメディアでの人々のリアクションを引き出すか、というアイデア設計は、基本的には一緒です。でも、「このアイデアなら、絶対ソーシャルがザワつく」という感覚のほうが、今はわかりやすく、ポイントになりやすい気がしますね。