広告を出せない・出さない企業こそ、コピーライティングにこだわるべきだ!

『100万社のマーケティング』は、「デジタル時代の企業と消費者、そして社会の新しい関係づくりを考える」をコンセプトに、理論とケースの2つの柱で企業の規模に関わらず、取り入れられるマーケティング実践の方法論を紹介する専門誌です。記事の一部は「アドタイ」でも紹介します。第10号(2017年2月27日発売)が好評発売中です!詳しくは、本誌をご覧ください。

「広告せずに、評判をつくる」──それが可能ならば、規模の大小を問わずあらゆる企業が、自社のブランドや商品を世の中に届けていくのに同じだけのチャンス・可能性を持っていることになる。それを実現するのが、コピーライティング、すなわち言葉を巧みに操る力だ。

コピーライティングは、決して広告を打つ企業と広告会社だけのものではない。「コピーライティングとは、マーケティングそのものである」と語り、コピーライターとして、広告・キャンペーンのみならず数々のコンテンツやプロジェクトを成功に導いてきた著者が、あらゆる企業が身につけたい、コピーライティングの心構えと手法を解説する。

梅田悟司 Satoshi Umeda
電通 コピーライター、コンセプター

主な仕事に、ジョージア「世界は誰かの仕事でできている。」、「東北六魂祭」事業構想など。著書に10万部を超える『「言葉にできる」は武器になる。』(日本経済新聞出版社)他。CM総合研究所が発表するコピーライタートップ10に、2014年から3年連続で選出される。横浜市立大学客員研究員。

 

最小単位で情報が流通する時代

インターネットへの接続料金さえ支払えば、誰もが簡単に世界とつながることのできる時代である。そのため、ほぼ全ての企業が最小の投資費用で、自社製品やサービスを世界に向けて売り込むチャンスに恵まれているとも言える。

その一方で、マーケターの悩みは膨らむ一方だ。なぜなら、インターネット上には数え切れないほどの情報が溢れ、自分たちが発信する情報にたどり着いてもらうことが非常に困難だからである。

では、自社情報に触れてもらう、自社サイトへ到達してもらうためにできることとは何だろうか。できることは多岐に 渡っているように思えるが、実は大きく二点に限られる。

一つは、広告を打つこと。マスメディアへの広告出稿から、ポータルサイト単位でのサーチワード広告やバナー広告で導線を確保することもできる。また、記事のような体裁で製品特徴を書いてもらう記事体広告も有効であろう。

そして、もう一つは、製品やサービスの「見せ方」を変えることである。この「見せ方」は、自社ブランドの魅力をどのように表現・体現するか、と言い換えられる。

本稿では、その中でも、具体的な表現手法としてのコピーライティングの重要性について論じていきたい。では、一体なぜ、コピーライティングなのか。

その理由は明確だ。インターネットやSNS上では、常に情報が選別される熾烈なメディアである一方で、選別基準が大きく「文字」に依存するからであ る。自身の経験を振り返ってみると分かりやすいのだが、パーソナル・コンピュータやスマートフォンでニュース記事を閲覧するとき、数ある情報のなかから、特定のニュースや記事を選んだ理由は何だっただろうか。

SNSで自分のタイムラインに流れてくる多数の投稿の中から、なぜその投稿にだけ注目してしまったのだろうか。 おそらく、大半の方は「気になったから」と答えると思う。しかし、より解像度高く表現するならば「多くの情報を読み飛ばす中で、心が惹かれた文章があり、詳細を知るために思わずクリックした」というプロセスを瞬時に行っていたからであると思われる。

インターネット上でのコミュニケーションは一見万能で、何でもできるように思われがちだが、現段階では画面と向き合うという制約があるため、視覚と聴覚から入ってくる情報に限られる。その結果、必然的に言葉が行動に与える影響は大きくなるのだ。

広告出稿には必ず費用が発生する。しかし、コピーライティングは、自分で行う限り、費用は掛からない。さらに、多くの人から魅力を感じてもらえる言葉や、新しい文脈を生み出せたならば、広告を出稿するまでもなくPR記事が掲載され、自然とニュースになったり話題化される可能性すらある。

その意味からも、広告を出せない企業こそ、コピーライティングに力を入れるべきであると言えよう。では、一体どのようにしたら、強く、話題になるコピーライティングが可能になるのか。本稿では、そのヒントとなる考え方と、具体的な方法について述べていきたい。

次ページ 「製品はメーカーのものではない ユーザーのものである、という前提」へ続く


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