総合商社の双日は、創業・発展の地である神戸港の開港から150年、また同社の源流の一つである鈴木商店が当時日本一の総合商社として栄華を極めてから100年という節目を迎えるにあたり、昨年末より特設サイトを開設した。特設サイトで、1988年に刊行された人気漫画『栄光なき天才たち』の「鈴木商店」編を、集英社の協力のもとで復刻、公開している。
双日の源流は、開国、明治・大正期の産業革命、戦後復興、高度成長といった近代日本の発展の過程において、神戸の地で拡大した鈴木商店・岩井商店・日本綿花(ニチメン)の3社。神戸開港や貿易の始まりを契機に、産業革命や第一次世界大戦期を経て、大きく発展していった。
担当者はこの歴史を踏まえ、「この3社を合わせると国内最大級の規模で、日本の産業革命を牽引していました。そこには当時の商人たちの高い志があり、それが今の双日にもカンパニースローガン『New way, New value』として受け継がれています。こうした創業の理念や、歩んできた歴史を社内に再認識させようと、神戸開港150年を機に、社内でも歴史展示コーナーをオープンさせました」と、自社の歴史に着目した背景を話す。
サイト開設の背景には、鈴木商店のドラマ『お家さん』(2015年)が放映され、NHK連続テレビ小説『あさが来た』(2015年)では日本綿花の創業者・広岡信五郎の妻である広岡浅子にスポットが当たるなど、同社の歴史に対する関心が高まったこともあるという。
こうした双日の歴史を社内に留めるのではなく、広く世間の人に知ってもらおうと考え、今回のサイト開設に至ったと同担当者は話す。
「日本の産業基盤をつくった商人たちの志は、今の人たちにも共感いただけるはずです。歴史を知ってもらうことで、皆さんに勇気を与えつつ、当社のブランド価値を高めることにつながるのではないか、と考えました。双日は2014年にニチメンおよび日商岩井と合併して誕生した新しい会社でありますが、歴史と伝統のある会社でもあることを皆さんに知ってもらえればと考えています」(同)。
Webコンテンツとして漫画を選んだ理由には、「歴史」という、ともすると“堅苦しい”と捉えられてしまう話題をいかに生活者、特に若い世代に伝えることができるかという課題があったという。さらに30年前に描かれた『「栄光なき天才たち』の中に「鈴木商店」編があり、読者から人気があったと言われていたことから復刻を決め、さらに、同作の作画を手がけた森田信吾氏に日本綿花・岩井商店にまつわる名場面とエピソードをイラストで描いてもらうこととなった。
「『栄光なき天才たち』は、フジテレビのテレビ番組名にもなるほど(編集部注:番組の放送は2016年8月まで)、未だ人々の心に残る名作であり、サイト公開後も『あっ、あの栄光なき天才たちか』といった声がSNS上でよく見られました。30年前の名作ですから、1980年代に小学生・中学生だった40才以上の方へのリーチ手法としても効果的と考えました」と担当者は企画の手ごたえを語った。
スタッフリスト
- 社内スタッフ
- 双日広報部 制作課 課長 小林正幸(プロジェクトリーダー)
同課 課員 髙市雄也(テクニカルチーフ)
- 歴史監修+制作協力
- 吉田一正(創美社)
- 漫画
- 森田信吾
- 協力
- 集英社