3月10日に開幕した、SXSW(サウス・バイ・サウス・ウエスト)。2007年にTwitterが世界的にブレイクしたきっかけとしても知られ、最先端のテクノロジー企業、イノベーター、投資家が集まる、世界中が注目する最もクールなイベントの一つだ。
その起源は1986年に遡る。ミュージックの祭典にはじまり、過去ノラ・ジョーンズやエイミー・ワインハウスなどのスターを生み出した。1998年よりインタラクティブ部門を開設。現在では「ミュージック」「フィルム」「インタラクティブ」の3部門で10日間8万人以上の来場者があり、オースティンに195億円の経済効果をもたらす巨大イベントに成長した。
「SXSWは『複数のスタートアップ・サミット・イベント』と『FUJI ROCK FESTIVAL』と『東京国際映画祭』を足し合わせようなイベント」というのは、アビームコンサルティング 本間充氏。その表現どおり、期間中はオースティンの街全体がフェスティバル仕様となる。空き地には仮設会場が並び、ライブハウスやレストランでは夜更けまでライブや映画上映も行われる。
一方インタラクティブのイベントでは、イノベーションのパートナーを探す投資家や企業家、メディアが多数来場する。若い企業にとっては、自社や技術力をアピールする好機であり、世界のスタートアップが、メイン会場で開催される巨大見本市や、アワードにこぞってエントリーする。予約すれば、世界のイノベーターからメンタリングを受ける機会もある。
日本企業も出展に近年意欲的だ。公式パートナーであるマツダに加え、今年はパナソニックやソニー、NTTがパビリオンを出し、パルコ、ワコムなどの企業も出展を発表している。
オースティン市内中の大型ホテルを貸し切って終日行われるセッションも膨大な本数があり、豪華なものばかりだ。昨年はSXSW30周年を記念し、オバマ前大統領がミシェル夫人とともにキーノートセッションに登壇した。
期間中、毎日現地時間の午後2時から行われるキーノートのテーマは、ブランド、広告、メディア、エンタテインメント、ファッション、スポーツなど、マーケティング・コミュニケーション領域に親和性が高いものから、政治、医学、社会学、心理学、倫理、宗教、教育といった、現代社会への問題提起など幅広い。
パネルディスカッションも多く、答えのない議論や、今まさに世界で起こっている問題に対する提言が繰り広げられる。
このようにSXSWは、企業が試作製品や事業アイデアをプレゼンする場であり、世界のギーク達が現在進行形の議論を交わす、「プロトタイプ」という言葉がピッタリ合う、混沌としたイベントである。
だからこそ面白く、世界中の事業構想家がインスピレーションを得に足を運び、ネットワーキングしていく貴重な機会なのだ。
日本人の来場者数は右肩上がりに増えている。今年、オースティンに来る人は何を期待し、掴んで帰るのだろうか。来場者が抱く想定を良い意味で裏切る、刺激的な10日間がはじまる。